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FUJITAYA
第3章 手作りの気持ち
藤田さんは準備をするのと同時に、予約の時間を早めてもらえるか電話をしてくれたらしく、奇跡的に前の時間の予約がキャンセルになったらしく、時間を早めることができた。
藤田さんが着替えた服も新鮮で、いつも見ていた服は私服ではなく仕事着だったことに気付いた。
帰りに車で送るからという言葉を何回も何回も断り結局折れた藤田さんと、おすすめのワインを飲み、おいしい料理を食べながら、少し酔っているなぁと感じながらも、色んな話をした。
「今日、先生に店に飾ってあるニットとかは藤田さんが作っているって聞きました。」
「おばあちゃん言ったんだ、なんか恥ずかしいな」
そう照れくさそうに笑いながら、言った。
「俺、最初は店を継ぐつもりなんてなかったんだ。」
「え、そうなんですか!」
誰にも言ったことがないんだけどね、と話してくれたのは、要さんも最初は会社勤めをしていたこと、その会社で関わった児童養護施設の子どもたちを見て、自分に出来ることは他にないのか考えた時に、自分だけができるもの、それが編み物だったらしい。
「俺さ、子どもがすっごい好きで、その子たちのこと考え始めたら何も手に付かなくなって、仕事も大事だったけど、今したいと思うことをした方がいいと思って、辞めたんだ。今考えると勇気あるよな。」
「じゃあ、なんで児童養護施設ではなくFUJITAYAに?」
藤田さんはニヤッと笑って、一口ワインを飲んだ。