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FUJITAYA
第4章 好きになってしまう
藤田さんの姿をちゃんと確認して、玄関に招き入れた。いきなり住所を教えろなんて言ってごめんねと言うが、その割には申し訳なさそうにしていない。相変わらずの藤田さんに安心しながら、とりあえず紅茶かコーヒーかどちらがいいか聞こうと思ったとき、腕を掴まれ少し屈んだ藤田さんと目が合った。
「鮫島さん、こっち見て」
優しい声色に、優しい眼差しで、本当に、優しいという言葉の代名詞のこの人を見て、少し泣きそうになった。
「ね、俺エスパーだからって言ったでしょ?おいで。」
少し笑ってから、そっと抱きしめられた。
エスパーだからと言って私の心の中ばかりを覗かれてはたまらない。
でも、泣きたい時にこうやって現れては、抱きしめられ、…もうこんなの、好きになってしまう。
彼の前だと、自然に一人では出ないものを、全て出てしまう。こんな弱い自分も。
なのに、藤田さんが背中を優しく叩き、時々頭も撫でてくれて、大丈夫だよと声をかけてくれれば、本当に大丈夫な気がして。甘えてばかりだと思いながら、やっぱり涙を止めることができなかった。