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FUJITAYA
第5章 送りたい相手
「それじゃあ、改めて!変な誤解も解けたことで!かんぱーい!!」
加奈さんのテンションはいつもより高いけれど、私の心の中はまだ少し混乱していた。FUJITAYAに着いた途端、色んなことが驚きで、まだこれが本当のことなのか疑っていた。
「それにしても、鮫島さんごめんね!驚かせちゃったみたいで!何も言わない要君が悪いだけなんだけどね!あ、美里ちゃんって私も呼んでいい?」
「ちょっとは落ち着け。いい加減座れ。」
加奈さんがはぁ~いと言いながら嬉しそうに話す相手は、要さん…ではなく要さんに激似のお兄さんだった。
名前は楓さん。要さんの3歳上らしい。口数は少なく、出る言葉も少し不愛想だけど、加奈さんのことが大好きなこと、また彼女の身体にすごく気を使っているのが分かる。座ろうとする加奈さんの身体に手を当てていた。
彼女のお腹の中には赤ちゃんがいる。
彼女の両親は早くに亡くなり、頼る存在がいなくて不安を感じていたところ、要さんと楓さんの祖母、先生が家に来いと言ってくれたと教えてもらった。
私と初めて会った時、藤田の名を言えば混乱させてしまうかもしれないから、とっさに大島って言っちゃったと笑っていたが、私はそのせいでだいぶ悩んだんだけどな~と思い、私は苦笑いしかできなかった。ニヤニヤと笑う彼女はきっと私の気持ちに気付いているんだろうと思った。