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FUJITAYA
第5章 送りたい相手
「ねぇ、最近店に来てなかったのは、仕事忙しかったから?」

「へっ…」

 突然、要さんに質問され、なんて答えようかとすごく迷った。要さんのことが好きということをばれないようにするために、なんて答えるのがベストなのか分からなかった。


「…ごめん、変なこと聞いて。俺、やっぱ酔ってんのかも」

 そう言って笑う要さんの表情が少し寂しそうに見えて、何か変な誤解を生んでいないか不安になった。もう変に会えなくなったりするのは嫌なのに…

「美里ちゃんも今日はゆっくり休みな。おやすみ」


 すぐに背を向け歩き出す彼を見て、行かないでほしいと強く思った。

 衝動的に足が動き出し、彼の背中に抱きついた。背中からも彼の匂いがして、胸がキュンとなった。

「……行かないで、ください…」

 多分素面の私はこんなことができなくて、お酒の力を少しだけでも借りることができているのだと思う。

「大島さん…加奈さんと……付き合ってるんじゃないかと思って…」

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