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海に散る桜
第1章 海に散る桜
いよいよ出発の時間になった。飛行服にゴーグル姿の隊員たちは見送りの人々に敬礼し灰緑色の九九式高等練習機に乗り込んだ。揃いの真っ白なスカーフが風にたなびいている。部隊がいつ知覧に向けて出発するかは極秘事項であったのだが、飛行場は待機中の他の兵士や近隣の住民たちであふれていた。
エンジンがかけられ、プロペラが回った。十二機の練習機は一斉に滑走路へと動き出した。
「万歳! 万歳! 万歳!」
一機、また一機と大空へ舞い上がった。腕や日章旗をちぎれんばかりに振りながら、決して帰ることのない若者たちを見送る人々。口では「万歳」と叫びながら、その顔は流れる涙で濡れていた。
練習機は三機ずつの編隊を組み、見送りの人々の上を何度も低空で旋回した。竹田は旋回しながら、景色を、人々を、しっかりとその目に焼き付けようとした。だがすぐ下にある大きな主翼が邪魔をして、人々の表情までは見てとることができなかった。
突然、灰色の視界の中に、美しい色が目に飛び込んできた。竹田はゴーグルを上げ、微笑んだ。
――ああ、綺麗だ。
堤防の桜が満開だった。
やがて十二機は高度を上げ、名残惜しげに西の空へと飛び去って行った。
エンジンがかけられ、プロペラが回った。十二機の練習機は一斉に滑走路へと動き出した。
「万歳! 万歳! 万歳!」
一機、また一機と大空へ舞い上がった。腕や日章旗をちぎれんばかりに振りながら、決して帰ることのない若者たちを見送る人々。口では「万歳」と叫びながら、その顔は流れる涙で濡れていた。
練習機は三機ずつの編隊を組み、見送りの人々の上を何度も低空で旋回した。竹田は旋回しながら、景色を、人々を、しっかりとその目に焼き付けようとした。だがすぐ下にある大きな主翼が邪魔をして、人々の表情までは見てとることができなかった。
突然、灰色の視界の中に、美しい色が目に飛び込んできた。竹田はゴーグルを上げ、微笑んだ。
――ああ、綺麗だ。
堤防の桜が満開だった。
やがて十二機は高度を上げ、名残惜しげに西の空へと飛び去って行った。