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海に散る桜
第1章 海に散る桜
 午後、知覧飛行場着。

 知覧は鹿児島県の南部にある小さいが美しい街だ。ここ知覧飛行場は沖縄の戦場からおよそ六五〇キロという位置にあり、特別攻撃隊の最前線基地となっていた。全国各地から送られてきた特別攻撃隊は、知覧や同じく鹿児島の万世飛行場で出撃命令を待つことになる。第七十九特別攻撃隊は第七十九振武隊と名称を変更し、兵舎の一つが割り振られた。

「狭いな」

 橋本が正直すぎる感想を口にした。壁がほとんどなく三角形の屋根をそのまま地面に置いたような特徴的な建物は、その形から「三角兵舎」と呼ばれているらしい。

「少しは口を慎めよ」
「事実だろう」
「まあ、な」

 一応十六名が定員ということになってはいるが、成人男子十二人が一つ屋根の下で寝起きするには、三角兵舎はあまりにも狭かった。隣に立つ隊長の西田も苦笑いしている。三角形の建物は内部も三角形になっており、兵舎というより大きなテントの中にいるような感覚だった。

「部隊数が多いんだ。仕方がない」

 飛行場に隣接する森のあちこちには、全体を緑色に塗装された三角兵舎が木々に隠されるようにして建てられていた。この奇妙な形は、敵から見つかりにくくするためだと聞いた。竹田たちが操縦してきた練習機も、目立つ格納庫ではなく、木の枝などで偽装して森の中に分散させて駐機している。知覧飛行場は特攻隊の基地として米軍の空襲を受けることも多い。特別攻撃隊の隊員や飛行機を敵の目から隠すことが最も重要で、練習機を山吹色から灰緑色に塗り替えたのもそのためだった。

「なに、それほど長い間じゃない。合宿だと思えば雑魚寝も悪くないさ」

 第七十九振武隊出撃の日は九日後、四月十六日に決まっていた。
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