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海に散る桜
第1章 海に散る桜
「俺は死にたい。誰にも顧みられることのない俺みたいな人間は死んだ方がいいんだよ」

 橋本はいつもの皮肉げな笑顔ではなく、静かに微笑んだ。竹田を見つめる橋本の瞳は、竹田を透かして何か別の物を見ているように感じられた。知覧に到着するまで、誰も見送りに来なかった橋本。きっと他人にはわからない深い事情があるのだろう。けれど、死んだ方がいい人間なんていないのだ。

「そんなことはない。お前には俺がいる。俺もお前と一緒に逝くよ」
「……ありがとう。人生の最後にお前と知り合えてよかった」

 橋本は微笑んだ。神様のように綺麗な微笑みだと竹田は思った。
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