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海に散る桜
第1章 海に散る桜
「今、地元で桶川飛行学校の施設を保存する会が立ち上げられ、施設内の見学もできるようになっています。そして当時あの飛行学校にいた第七十九振武隊の方々の足跡をう辿るうち、竹田少尉がご存命で、この病院に入院中だと知ったのです」
「なるほど」

 葉山は持参したアルバムを竹田に手渡した。そこにはずいぶんと古びてはいたものの、あの頃と変わらない姿の建物が写っていた。竹田は節の目立つ手でページを繰った。

「懐かしいな。まさか本当に建物が残っているとは」
「飛行学校の建物が現存しているのは日本中でもうここだけになってしまったらしいです」

 葉山は桶川飛行学校の辿った数奇な運命を語った。

 終戦後、飛行学校の建物は大陸からの引き揚げ者のための集合住宅となった。最後の居住者が退去したのは平成十九年。戦後六十二年が経過していた。
 土地を管理していた桶川市は跡地を更地にした上で国へ返還する予定だったが、それを知った市民の間で貴重な歴史的建造物である飛行学校の保存を求める運動が起こった。保存運動と市民ら一万四千人の署名に、桶川市は飛行学校跡地を国へ返還せず、国から跡地を買い取った。
 また、飛行学校の滑走路は長らく放置され荒れ果てていたが、昭和四十一年ホンダにより買収され現在までホンダエアポートの滑走路として使用されているということを葉山は語った。
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