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第1章 記憶

所轄の質問に対して、医者は複雑な顔し、いきなり深呼吸をすると

『正直、普通の記憶喪失と言っていいのかを迷っているんです。普通は脳内に何らかの記憶は存在して居てそれを取り出す機能に問題が生じると記憶喪失になるのですが…。』

と一気にまくし立てて、再び黙り込んでしまった。黙り込む医者に所轄が不思議そうな顔で

『それで？』

と医者を促すと医者は何かを決断したように

『彼女の脳内には記憶の存在がほとんど見当たらないんです。つまり、生まれたばかりの子供の脳とほぼ同じ数値が示されているんです。』

と答えた。はっきり言って申し訳ないが頭の悪い俺にはこの医者が言いたい事がさっぱりわからない。俺は医者に

『だから？』

と聞いた。今度は医者は開き直ったのか何故か簡単に

『ともかく、診断的には記憶喪失には間違いありません。後はレイプ検査の結果は未経験で、記憶が無いという点を除けば彼女はごく普通の成人女性であるというだけです。』

と俺に答えて来た。未経験とかこの状況でそういう説明は必要なのか？それよりも…

『成人！？』

と俺は医者に叫ぶように確認をした。医者は

『ええ、それは間違いありません。骨格や歯、細胞の劣化数値を見る限り、彼女は明らかに成人女性であります。』

とそれがどうしたというように俺に言った。そのまま医者は所轄に

『後はこれが彼女のＤＮＡ表記です。』

と少女の検査結果を渡しす。今はＤＮＡ登録は当たり前の時代。だからＤＮＡから知らべれば、少女の身元特定は容易いはずだと考える。

５分程度、パソコンを知らべていた所轄が厳しい顔に変わり俺と医者に

『該当する事件や事故もありませんね。捜索願いも出ていませんし、銀髪、碧眼なら外務省に問い合わせた方が良いかもしれませんねぇ…。』

と言い出した。俺は所轄に

『あの子はどうなるんだ？』

と聞いた。所轄は厳しい顔のまま

『明日、いや…、もう今日ですね。役所と外務省でＤＮＡ登録を確認して、それでも身元が判明しない場合は、彼女はアンノウンとして施設に送る事になりますね。事件性がない以上は、我々の管轄外になりますから。』

と答えて来た。俺は咄嗟に

『施設はダメだ！』

と所轄に向かって叫んでいた。