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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
施設にだけは絶対にダメだ…、まるでパニックになったように俺の頭はその事だけでいっぱいになっていた。そんな俺を不審に見ながら所轄が

『しかしアンノウンと断定された場合、我々の管轄外ですから。』

と答えて来る。それでも俺は

『施設だけは絶対にダメだ。』

と馬鹿みたいにその事を繰り返した。俺の意味不明な言動を見かねたように医者が

『彼女の場合、成人ですし、身元引受けが居れば施設にずっと入るわけではありませんよ。』

と俺に慰めの言葉を言って来る。身元引き受けとは就職先の社長などが生活保証が出来ると判断した場合、施設から一般社会に出す為に身元引き受けをする事がある。

だが、あの記憶の無い怯えるだけの少女が就職なんか簡単に出来るはずが無く、結局は貧しい施設で苦しい思いをするのは目に見えた。パニックのまま俺は医者に

『軍人の身元引き受けとかは可能なのか?』

と考え無しに馬鹿な事を聞いた。自分の頭の中じゃ、聞いたからと言って俺はどうするつもりなんだ?と自分自身に問いかけている状況なのに何故か聞かずにはいられなかった。

俺の質問に対し、医者の代わりに所轄が

『軍は国の第一優先職ですからねぇ。身元引受けなどは容易いはずですよ。』

と答えて来た。医者は

『とにかく、役所と外務省からの返答が来るまでは彼女の身柄は入院扱いにしておきますから。』

と俺に言い、所轄は引き上げ、この話しは終わった。家に帰る事を諦めた俺が少女の病室を見に行く頃にはもう空が白くなり始め、夜明けという時刻を告げていた。

俺が少女の病室の前まで行くと廊下をバタバタと看護婦達が走り回り、俺は検査に付き添っていた年配の看護婦を見つけ

『何か起きたのか?』

と聞いた。なんだかんだ言ってもここは軍人病院である以上は軍の管轄施設だから、医者も看護婦も軍人であり階級には従うという立場がある。看護婦は少し微妙な顔をして

『その…、ちょっと…、トイレがわからずに、彼女がおねしょをしたんです。』

と答えた。俺が病室に入ると既に服を着替えさせられた少女が病室の隅でまたしても怯えたように顔を隠してうずくまっているのが俺の目に入って来た。
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