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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
そうやって怯える少女にお構い無しに看護婦達は新しいベッドやシーツを用意してバタバタと動き回る中、俺は少女を見ながら

トイレすら知らない子に施設は絶対に無理だ。

と考えてしまう有り様。

きっと自分の状況が理解出来ずに泣いている…、そう思った俺は少女の前に立ち、ゆっくりと少女に

『大丈夫か?』

と聞いてみた。少女はすぐに俺の声に反応するように顔を上げたが、俺の予想通りに少女はやはり怯えた顔で涙をボロボロと流すだけだ。

なんとなく、俺は俺を見ている少女に手を広げて見せた。少女はフラフラと幽霊のように立ち上がるとすぐに俺の腕の中に飛び込んで来て静かに泣き始める。

俺がそのまま泣いている少女を抱き上げると、年配の看護婦が俺に

『彼女の着替えとかどうしましょう?ここは一応、軍の施設なので…。』

と困った顔を向けた。軍の施設だから、軍の関係者以外の入院患者に病院の貸し出す服はない。まして少女は下着すらなく、施設が決定するまで下手すれば裸で過ごす事になってしまう。

とりあえず財布にあった有り金全てを看護婦に渡してから

『買い物だけ頼めるか?』

と聞いてみる。年配の看護婦は少し笑いながら

『私で良ければ今夜の夜勤明けにでも彼女に必要なものを買い物に行って来ます。後、うちの娘のお古で良ければ少し持って来ますね。』

と言ってくれた。俺は看護婦に礼を言い、看護婦は何かあれば緊急呼び出しで呼んでくれとだけ言って少女の病室から出て行った。

新しくベッドが整い全ての看護婦が出て行った病室で少女はまだ俺にしがみつき、少しは落ち着いたのか、大人しく俺に抱えられたままだ。とりあえず俺は少女を綺麗になったベッドに戻してから少女に

『俺はアルト、赤羽 アルト、職業は軍人で陸軍対テロ特殊部隊の少佐だ。』

と言ってみた。とりあえず少女と何かを会話する事で少女が何か覚えていないかを観察する。少女は俺に

『アルト?』

と聞いて来るから俺は少女に

『そう、アルト。母親が音楽教師だったから俺にアルトと名付けたが、残念ながら俺は図太い声になっちまった。』

と話しをする。だが、やはり少女は俺の言葉がほとんどわからず、ただ不思議そうな顔をするだけだ。
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