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堕天使 1st gig.
第11章 亡霊
そうやっていくうちに、俺はほとんど施設の職員に殴られる事はなくなっていた。むしろ、職員から褒められる立場に変わっていた。

学校の成績は相変わらず悪かったが、体育では何かと俺がクラスの手本となり、そういう報告が学校から施設に定期的に送られるから、施設の職員からも学校からも問題児として扱われる事もなく、信用がある分、自由が少しずつ増えていくのを俺は理解していた。

そして、俺が中学に入り、翔は施設を出て行った。表向きは翔は就職して施設を出たのだが、就職先を僅か3ヵ月で翔は辞めていた。翔は

『山脇さんの舎弟になったからな。』

と俺に言っていた。山脇とはあの趣味の悪い男だった。山脇は義侠会のチンピラだった。翔は形だけ就職して施設から抜け出し、自由になった今、義侠会のチンピラの弟分になっていた。翔は

『まだ16のガキだから、盃は貰えないけど、これで今まで以上に稼げるから、お前は足を洗えよ。』

と言って俺に見張りの仕事を辞めさせた。その変わり、この貧困時代に翔はかなり金回りがよく、何かと施設から俺を連れ出しては飯を食わせ、食い物に困らないようにと金をくれた。

俺は翔に言われるまま、身体を鍛え続け、翔が高校にだけは行けと言うから、施設に残ったまま底辺ではあったが何とか高校にも通っていた。

だが、俺が高校を卒業する年に、翔が人殺しをして俺の前から姿を消していた。家族でもなんでもない俺の存在は翔が服役した刑務所も何もわからないまま、俺は翔とは会う事も連絡する事もなく軍に入っていた。

それっきり、翔の消息は俺にはわからない。その翔の事を今更、軍から尋ねられても俺には答えようがなかった。

ただ、ベッドで相変わらず無邪気な顔で眠っているリナの寝顔を見ながら、俺は

例え翔だとしても…、リナの為なら俺は絶対に割り切ってやる…

と考えるだけだった。

しばらく平穏な日々が続き、俺は翔の事は徐々にまた忘れていった。そして、秋になり気温が下がった事でリナはご機嫌になり、俺はいつも通りの毎日を送っていた。
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