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堕天使 1st gig.
第12章 クリスマス
今は俺は休暇中で、今の俺は何も出来ない。軍はあくまでも王と翔の情報を集めては居るが、まだテロとして手配をした訳でもなく、俺に王の討伐命令の任務が降りている訳でもない。

俺はリナの頭を撫でて

『大丈夫だ。寒くなって来たから帰ろうぜ。』

と言っていた。帰ってからリナは鍋の用意を必死にやっていた。小さなテーブルコンロに2人用の土鍋を乗せてリナが切った野菜や肉を入れていく。

俺が食いたいと言ったから、俺の女としてリナはリナなりにいつも必死だった。

酒が飲めないリナがアップルタイザーを飲みながらビールを呑む俺の上で

『お鍋食べる?』

とか

『チキン食べる?』

と聞いて来る。俺が

『ああ。』

と言うだけでリナは俺の飯を食わせてくれる。いつも通りの夕飯だが、リナには楽しみにしていたクリスマスだ。だから、俺は出来るだけいつも通りにしていたつもりだったが、ある程度食ったらリナが

『あの人誰?』

と聞いて来た。俺は王の事は機密だから、リナには話せずに

『昔の知り合いと間違えたが、違ってたみたいだ。』

と答えてた。だが、リナはクスクスと笑いながら

『小雪ちゃんも言ってたけど、アルトは嘘が下手だよね…。今だって、アルトの頭はあの人でいっぱいなのに…、私に言えないって事は仕事の関係だよね。』

と言い出した。咄嗟に俺は

『悪い…。』

と言ったがリナは

『誤らなくていいよ。仕事が気になっているのにちゃんと私の事を考えてくれているアルトが私は好きだから。』

といつもの我慢を見せていた。宗司並に俺の嘘を見抜き、俺の考えを読み取るリナに俺は逆らえずに言いなりになると思っていた。

無理矢理に俺に踏み込む事はなく、だけど俺の考えを見透かして俺を自分の手の平の範囲なら好きにしろというリナが今は俺は手放せない。

だから、いつものようにリナの頬にキスして俺は王の事には一切触れず、翔という男の事だけをリナに話していた。

そして、あの男は翔と全く同じ顔をしているが翔とは全く別人だと俺は確信していた。
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