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第15章 温泉

状況を誤魔化すように俺は中居さんに

『風呂はもう使えますか？』

と聞いてみた。中居さんは

『夜は１時まで、朝は６時から使えます。後は予約で家族風呂も今日は開いてますよ。』

と答えて来た。リナは予約という言葉にだけ反応して

『予約のお風呂！？行きたい！』

と叫び出す。中居さんは普通に

『それでしたら今から２時間の予約で、お入れしておきます。』

と丁寧に正座し、頭を下げて部屋から出て行った。

家族風呂の意味をリナに教えるべきか？

そんな事を考えながら俺は浴衣に着替えていた。リナも俺の真似をして慌てて浴衣に着替えたが、リナの浴衣は合わせが反対になっていた。

『こら！左前は死人が着る浴衣だ。』

そう言って俺がリナの浴衣を着せ直す羽目になる。だから、家族風呂の事は結局黙ったままリナを連れて風呂に向かっていた。

廊下のあちらこちらに矢印で大浴場の方向を示す看板がありリナが

『迷路みたい。』

とはしゃいでいた。家族風呂の前まで来てリナが

『アルトは男風呂でしょ？』

と不思議そうに俺に聞く。俺は普通に

『家族風呂は男も女もなく、家族が一緒に入る風呂、つまり俺とお前が一緒に入る風呂だ。』

と言ってリナを無理矢理に脱衣場まで連れて行った。

『嘘だぁ～！？』

と叫ぶリナを放置して、俺はさっさと脱いでから

『今更、見慣れた身体だから気にすんな。』

とリナに言ってから風呂に向かっていた。リナを待ってグズグズしてたら、寒さで俺の方が風邪をひく。

身体と頭を洗ってから俺は露天風呂に向かって湯に浸かる。あまり風呂は好きな方ではないが疲れた身体にはやはり湯が染み込む感覚が気持ちいいとか思ってしまう。

随分、遅れてからやっとリナが俺が居る湯船に来た。俺はただ湯船の中で疲れた筋肉をほぐしていた。リナが俺を眺めながら

『やっぱり、アルトの身体って違うねぇ…。』

と言い出した。俺は不機嫌に

『誰と比べて言っている…？』

とリナに聞いてやる。リナは平然と

『テレビに出てるおじさん、温泉に浸かってるシーンとかお腹がぷよぷよしたおじさんばかりじゃん？』

と言って来た。