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堕天使 1st gig.
第17章 女王様
別に大地の前でわざわざ俺が特別に格好つけてる訳じゃない。俺は普段通りで宗司に甘えて怒られているいつもの俺のままだ。それでも大地にはそんな俺が全く見えていないらしく、勝手に俺の前で自分が失敗しないかと怯えて萎縮してしまっている。

『その内にわかるだろ。』

と俺は五十嵐に言っていた。わからないようなら、大地の別部隊への配属願いを俺が出すだけだ。大地がこのまま、うちの部隊では危険だと判断すれば俺はそうしてやるしかなかった。

昼飯の後、2課の部屋に戻ると学校から戻った雄太が

『隊長、佐々木さんに冷たくね?昔っからの知り合いなんしょ?』

と聞いて来る。

女王様に甘い顔したら自分を見失うからだ…

と雄太に本音を言う訳にはいかず

『関わりたくないからな。』

とだけ言っていた。雄太は

『なんで?』

とまだしつこく聞いて来る。俺は

『リナが誤解するだろ?』

と誤魔化していた。

実際、高校までは瑠衣とは会うだけで何もなかった。高校の3年に瑠衣が大学受験だからと俺に連絡して来なくなっても俺はどうでもよかった。

翔の事もあり、俺は半分ヤケクソで軍に入ってしまってからは瑠衣とは全く連絡を取る事はなくなっていた。

大戦に1年行き、その後の海外派兵の時、3ヵ月を戦地で過ごし、1ヶ月を日本で休暇を取るという状況で、俺は今の上司である親父さんが日本での初めての休暇に俺に呑みに行こうと誘って来た。

親父さんと向かった居酒屋で俺は4年ぶりの瑠衣に会ってしまった。瑠衣は大学の連中と呑みに来ていたらしく、俺が居酒屋に入った時には既に酔っている状況だった。

瑠衣は俺を見るなり

『アルト…。』

と言ったが俺は黙って親父さんと席に座っていた。俺と親父さんが呑む席のすぐ後ろで瑠衣は一緒に居た男に

『帰りは送るから大丈夫。どんどん呑もうよ。』

と煽られて呑んでいるような有り様だった。瑠衣が目に涙を浮かべ

『もう…、無理よ。』

と言っていたが男はほぼ無理矢理に瑠衣に呑ませようとしていた。
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