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第2章 仕事

基本、俺は嘘が下手だ。中途半端な嘘を俺が言っても俺よりも目ざとい五十嵐や宗司には必ずバレる。だから俺はわざとふざけるように話しをはぐらかす。

『俺の女が居るんだよ。』

ってな感じだ。俺のふざけた言葉に五十嵐は呆れて

『女の為の病院通いか？』

と俺に言う。宗司はやはり不機嫌になり

『それで寝不足とか笑えません。』

と俺を責めて来る。俺は適当に

『簡単には俺を寝かせてくれない女だからな。』

と答えていた。正直に言えば、俺はリナの事をこうやって思い出すのは嫌だった。もし俺がこのまま見放せば、リナは自動的に施設に移される。その事を考えるのが俺は嫌でたまらなかった。

そんな俺の微妙な心の変化にすら気づく宗司は

『コーヒーは？』

と話しを変えるように俺に聞いて来ていた。俺は

『２課で飲む。』

と五十嵐に嫌味で言っていた。五十嵐は

『ここで飲んでも同じ不味いコーヒーだぞ？』

と俺に言うが俺はこれ以上五十嵐に病院での事を詮索されたくなかった。２課に宗司と戻ると宗司は真っ先にコーヒーを入れて俺にコーヒーを突き出して来る。

至れり尽くせりの宗司だが、その目は俺が宗司になら何かを話すと信じている目だった。だが、俺は宗司の期待を裏切るように

『相変わらず不味いコーヒーだな。』

とだけ言っていた。俺の言葉に意外な反応を見せたのは、やはり同じ２課のα分隊の隊員である酒井 雄太だった。雄太は突然話しに入って来るように

『へぇー？隊長でも、そういう事言うんだ？』

と俺にじゃれながら言って来る。雄太もやはり施設上がりの奴だった。大戦時は俺と同期だが、今は俺の部下でうちの２課では宗司に次ぐ近接戦闘の強者だ。

雄太はいわゆるチャラ男だ。雄太は緊迫した状況でも何かくだらない事を言わなければならないタイプの人間で、しかも人懐っこいからすぐに俺にじゃれて来るような奴だった。

俺はそんな雄太に

『不味いもんは不味いだろ？』

と聞いてみる。雄太は

『そりゃそうだけど…、隊長がそれを言うのが違和感っす。隊長ってなんでも食えれば何でもいいって人だから、美味い不味いは二の次っしょ？』

と言っていた。