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堕天使 1st gig.
第20章 花火
リナはまだ本物の花火を見た事がなかったからだ。貧困時代で花火をやる街は減り、最近、また復活した花火だから、俺も生で見るのは久しぶりだ。

『なら、もう少しの我慢だ。』

と俺はリナに言っていた。リナは

『日が暮れたら大丈夫だよ。』

と笑っていた。

吸血鬼か?

と言いそうになったがリナがグッタリとしていたから俺は黙ってリナを見てやるしかなかった。小雪が戻って来て冷蔵庫にあった冷却剤をリナの首に当ててくれていた。

宗司と五十嵐が

『大丈夫か?』

とリナの事を聞いて来るから俺は

『花火を見るのは初めてだから見たいらしい。』

と言っていた。とりあえずテントの日陰でリナはずっと小雪に冷やされながら、なんとか日暮れまでは耐えていた。

日が暮れると少しはマシになったかと思ったが、今度は花火見学の人が増え始め、テントや椅子を片付け、バーベキューは撤収する事になっていた。

1時間もしないうちに辺りは人の海になり、俺達は身動き出来ない状況になっていた。

『ふみぁ…。』

と情けない声を出すリナに俺は

『今更、この人混みだと帰れんぞ。』

と言っていた。雄太と宗司が出来るだけリナに空間を作ってくれたが俺達よりも小さいリナは呼吸も出来ないようだったから結局、俺はリナを抱き上げていた。

涼宮の子供達も涼宮とハヤトが抱き上げてとにかくはぐれないようにするだけで精一杯な人混みの状況になっていた。

小雪は五十嵐が後ろに立ち

『大丈夫か?』

と五十嵐が確認すると

『小雪は暑いのとか全然平気だから…。』

と言う小雪の笑顔を久しぶりに俺は見ていた。

『アルト…。』

とリナが泣きそうな顔をした瞬間

ドンッ…

と花火が打ち上げられていた。リナは音がする方へと顔を向け

『これが花火…。』

と呟いていた。ただ綺麗な花火を綺麗なリナが目を見開いて見ていた。すぐに消える花火のような束の間の時間を求めたがる五十嵐の気持ちが少しだけ俺は理解出来たような気がしていた。

『綺麗だね。』

と言ったリナに俺は

『ああ…。』

とだけ答えていた。
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