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堕天使 1st gig.
第20章 花火
俺は人の名前と顔が一致しない。だが、彼女は一枚の写真で記憶が出来るらしく、テロのアジトに出入りした人物全てを記憶出来るらしい。

だから、他のアジトへと移動すれば、彼女が追跡可能になり、テロ組織の繋がりや、重要人物の割り出しが可能なのだと宗司が言っていた。

『そりゃ、また凄い能力だな…。』

感心する俺に五十嵐が

『ちょっとはコイツの事覚えてやってくれ。』

と笑っていた。年に数回ある隊長会議で五十嵐の副官とは会うのだが、残念な事に俺は3課のサイバー部の隊長と副官すら区別がつかない有り様だ。

とりあえず、俺は

『岩本 さゆり大尉だっけ?』

と言ってみた。五十嵐の副官は泣きそうな顔で

『岩本 さゆみ中尉です。』

と俺に答えいた。副官で大尉は宗司だけだったか?とか俺は悪い頭で考える。宗司はため息をつき

『うちの隊長殿に記憶は求めないで下さい。』

と言っていた。結局、俺だけが馬鹿にされたまま政府ビルに着き、目的の会議室に向かっていた。階段型のアーチ状に並んだ机がある講堂の右手に軍の席があり、左手には警視庁や公安が既に座っていた。

対テロと指定された席に五十嵐、俺、宗司、岩本の順に座り、政府の係から今回のサミットの概要テキストが配られた。

講堂の正面では会議の司会進行をする政府役人がスクリーンに今回のサミット予定地やホテルの概要、簡単なスケジュール説明を行っていた。

それらの政府説明が終わり、次は各部所からの質問だった。各国から来るSPの名簿はいつになる?とか、自分達に必要な情報を政府の司会に求めていく。

『対テロは?』

と司会から俺達への順番が来た瞬間、五十嵐ではなく俺が

『ホテルからの封鎖エリアが半径2000mになっているが3000mに広げてくれ。』

と俺は質問ではなく要請を出していた。会場は一気にザワつき

『3kmとか本気か?』

『対応人員がどれだけ必要になる?』

『封鎖住民の事を理解してるのか?』

と陰口のような野次が出始めていた。状況に狼狽える司会が俺に向かって

『それは、質問ですか?』

と聞き直して来た。
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