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第20章 花火

翌日、仕事を済ませて早めに俺は帰っていた。リナに

『病院はちゃんと行ったか？』

と確認してみた。リナが何故か困ったような顔をするから俺は少し焦っていた。

『なんかあったのか？』

焦る俺にリナは

『アルト…、パパになるんだって。』

と言い出した。

つまり、リナが妊娠した！？

別に結婚している以上、妊娠くらいでアタフタする必要はないのだが、リナの体調の変化に俺は少し不安になっていた。

『アルトは子供は嫌？』

と不安な顔をする俺に同じように不安な顔のリナが聞いていた。

『嫌じゃない。驚いたからまだ気持ちが落ち着かねぇだけだ。』

『私は…、怖いかも…。』

と自分の身体の変化にリナの方が怯えていた。とりあえず、いつも通りにリナを抱えてリナの頬にキスしてやる。

『まだ暑くて辛いかもしれんが身体は大事にしろ。』

とそれをリナに言ってやるだけが今の俺の精一杯の状況だった。

家族が欲しかったのは事実だが、俺に子供とか大丈夫なのかと不安はある。タダでさえリナには辛い思いをさせている状況で俺は涼宮のように戦えるのかとか考えていた。

翌日はとりあえず宗司には

『リナが妊娠した。』

とだけ伝えた。宗司は

『次の休日は彩華も休みですからお昼に食事にでも行きましょう。あれは一応医者ですから、何かあればお役に立てると思います。』

とそれが当たり前のように言っていた。

怯えているのは親である俺とリナだけか…

そう考えながら俺はビビっても仕方がないといつものように開き直るつもりでいた。

だが、現実はそうはいかないようだった。リナが急激に吐くようになったからだ。俺が帰ると吐き、風呂に入ると吐き、飯を食う前に吐くというとんでもないつわりの状況に俺が

『大丈夫なのか？』

と聞いただけで

『わかんない…。』

と言ったリナがトイレに駆け込み吐きに行く。トイレから出たリナに

『明日の休暇に彩華さんが飯食おうって言ってくれてるけど行けそうか？』

と聞くと

『多分…。』

と頼りない返事をしたリナが再びトイレに駆け込んでいた。