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第24章 出産

家の駐車場に車を停め、家からリナを呼び出すと、たっぷり１分は固まった大塚が目を丸くしたまま

『隊長さんの奥さん…。』

と独り言のように言って来る。

『そう…、嫁…。』

『しかも、身重…。』

『そう…、今日が出産予定日…。』

『そりゃ…、あかんから日を改めて出直しますか！？』

と完全に大塚が慌ててアタフタとしていた。リナは相変わらずニコニコと

『初めましてぇ。』

と丁寧に大塚に頭を下げているから俺は

『とりあえず、駅前の居酒屋に行こう。うちのは料理が全く出来んからな。』

と大塚を促していた。俺の言葉に平気で俺を蹴飛ばして来るリナを見て大塚は

『大丈夫なんですか！？』

と不安な顔で聞いて来るが俺は

『大丈夫らしい…。むしろ動き回れと病院から言われて、やたら俺を攻撃するほど元気だ。』

と答えていた。大塚の反応を見て、銀髪、碧眼ってだけで充分に嫁としてインパクトがあるリナは、どう見てもまだ高校生みたいな顔をしているから、そこに妊婦の姿が加わり第一印象はますます強烈になっているんだと俺は感じていた。

居酒屋で個室を頼み、座敷の部屋に入り、ビールと適当な料理を注文する間も大塚はひたすらリナを観察するように眺め続けていた。

『まるでお人形さんが動いてるみたいですな。うちの娘とはえらい違いですわ。』

と大塚が言うから俺は

『お世辞はいいから、話しはなんだ？』

と大塚を促していた。俺の言葉にやはり膨れっ面になるリナを大塚が少し見てから

『守秘義務は言うまでもないですね？』

と俺に確認をするから俺は

『一応、こんなでも軍人の嫁だからな。』

と言っていた。リナは一応、俺や五十嵐達の話しの中で仕事の話しを聞いても、リナ自身は余計な事は言わないとちゃんと立場を理解している。

大塚は

『まぁ、守秘義務ってほどの話しはないんですが、ハーメルンはご存知ですか？』

と言い出した。それに対して俺よりもリナの方が反応して

『今、話題のハーメルン？』

と大塚の話しに喰い付いていた。