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第26章 訓練兵

俺はわざと大袈裟に明石にゲラゲラと笑っていた。明石の顔が屈辱に歪み、敗北を認めないフリをして俺に背を向けて立ち去っていた。

宗司はただいつもの涼し気な顔で

『ああいう、活きがいいのが好みですか？』

と聞いて来た。俺は宗司に

『ベッドで黙ったマグロの女は萎えるからな。』

とだけ答えていた。食堂でも俺はやたらとご機嫌のままだったから五十嵐が

『気持ち悪いな…。』

と言い、宗司が

『初日から口説きたい女が現れたからですよ。』

と呆れていた。五十嵐は

『また今年も女絡みか！？』

と叫び、俺は

『今年は退屈しねぇかも。』

と笑っていた。次の訓練日は明石は大人しく俺の指示に従い基礎訓練を容量良くやっていた。身体の使い方で出来るだけ身体に負担をかけない効率のいいやり方を明石は既に知っているようで全く息切れを見せる事なくトップを取るスマートなやり方をする奴だった。

俺はこういうやり方をする奴を１人だけ知っていた。それは宗司だ。だが、宗司は目立つ事を嫌い、トップはほとんど取らずに無難な成績ばかりを取るやり方を好んでいた。

だから宗司は教官から

『手抜きは死ぬぞ。』

と毎回言われ続けていたが涼し気な顔で手抜きを最後まで貫いていた。明石は宗司ほどは酷い手抜きではないが、無様な事だけはしたくないという感じだった。

ただ訓練の終了に俺の前を通り過ぎようとした明石の腕を俺が掴むと明石はすぐ様振り払い

『何か御用ですか？』

と俺に挑むように構えていた。俺は明石に

『５kgは止めておけ、完全に生活に馴染むまでは２kgで充分だ。いきなりの５kgは１ヶ月で身体を潰すだけだぞ。』

と言ってやっていた。明石はいつの間にかハンデを５kgに変えていた。しかも、それを日常から付けようとしているのが俺にはわかっていた。

だが、いきなりの５kgは筋肉や筋に負担が大き過ぎる以上、慣れない身体で無茶に続ければ故障の原因にしかならないのだ。

明石が

『それは忠告ですか？』

と聞くから俺は

『潰れた兵士は要らんからなぁ。』

とだけ答えて本部に帰っていた。