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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
それが対テロ特殊部隊の設立だった。俺は2年の海外派兵から日本へ呼び戻され、テロと直接対決する為の実働部隊の隊長に任命をされた。

対テロ特殊部隊2課隊長、赤羽 アルト少佐。それが今の俺の仕事で俺の階級だ。

家族もなく、守りたいものも信念もなく軍人になった俺は明日の事はどうでもいい、今をとりあえず生きていればそれでいいという、いい加減な人間に成り果てた。

そんな俺の目の前に、平気でフラフラと車の前に飛び出して来る少女に対して対テロ専門の軍人である俺がテロの危険性があると警戒するのは当然の事だ。

そういう時代だから…、軍人に直接テロを仕掛けて来る可能性がある時代だから、そう考えてぶっきらぼうに少女に確認する。

『もう一度だけ言う。怪我はないか?』

そう問いかけた俺に、まるで機械人形のように、ゆっくりと少女が顔を上げ、俺の方へと顔を向けた。

透けるように白い肌、大きく見開かれた蒼い目、だが少し小ぶりの小さな鼻に、乾ききった薄い唇。

俺の少女に対する第一印象は異国の少女というよりハーフに近い感じだ。歳の頃は15~16くらいに見える少女…。だがその年頃にしては不似合いなブカブカの寸胴と言える薄汚れたワンピース。

しかも、少女の足は裸足と来ているから、俺は少しこの状況に銃をかまえるのを躊躇ってしまった。

ただ振り返った少女は目から涙を零し、震えを隠さずに蒼い目で俺を真っ直ぐに見つめて来る。

何かの事故か事件に巻き込まれた子か?

少女を観察しながら俺は考える。少女はただ震えて考え込む俺を見ているだけだ。

今は4月になったばかりとはいえ、まだ夜は冷え込む時期だ。俺は少女に対して少し警戒心を解き、少女の隣にしゃがみこみながら

『お前、怪我はないか?もう大丈夫だから少し落ち着こうな。』

と涙を流し続ける少女にそう言った。少女はただ唇を震わせ、何かを言おうとしているが声が出せないような感じだ。

少女がこれ以上怯えないようにゆっくりと少女に手を出して

『とりあえず、寒いだろ?家まで送ってやるから車に乗らないか?何なら警察を呼ぶか?』

と聞いてみた。少女は不思議そうに俺の手をしばらく眺めてから俺の手に自分の手を重ねて来た。
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