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隷吏たちのるつぼ
第4章  第三章 詭謀の酬い



 パンツスタイルだということに慢心があった──いや、襲いかかるやボトムスの上からしゃぶりつかれるなんて、警戒できる者がいるはすがない。

 悠香梨は何度も禿頭をぶったが、脂の気色悪い感触が返されるだけで、野獣は股間を貪り続けていた。

「うあっ!」

 尖った舌がジュクリと突いてきた。ずぶ濡れにされた布地が媚丘へと貼りつき、不快を通り越して狂乱しそうだ。

「うう……、やめ……、ろっ!」

 こんな変態行為、いつまで続けるつもりだろう。頭を両手で掴み、手のひらで押し返そうとすると、

「ぶはあっ!」
 大きく息をついた征四郎が手首をタイミングよくとらえた。「くくっ、なかなかオイシかったよ」
「このっ、ふざけん……、わっ」

 背もそれほど高くなく、筋肉質とは程遠い男のどこにそんなパワーが潜んでいるのか、脚を肩にかけ、手首を掴んだまま、身を起こし始める。

「おらよっ!」
「えっ、あわ……」

 征四郎が力士のようにガニ股で踏ん張り、毛むくじゃらの腕が張ると、悠香梨の背中が床から浮いた。あわてて肩にかかった脚を外そうとしたが、その時にはもう、暴れて後ろに落ちるのが躊躇される高さにまで持ち上がってしまっていた。

「お、下ろせっ……」

 プルプルと震える腕を曲げ、腹筋を緊縮させて上躯を床と平行に保つ。視界の上縁で腕と同じように睫毛の影が震えていた。

「おー、スゴいね。鍛えてるんだ?」
「ぐっ、は、早く下ろ、せ……」
「くくっ、アソコにシミ付けて凄まれたって、説得力ねえなぁ」
「おっ、……おま、えがっ、やったんだろっ!」

 征四郎の声もいきんでいたが、会話をする負担は悠香梨のほうがはるかに大きい。部活で鍛えてはきたが卒業して久しく、すぐに腹筋が疲労して辛くなってきた。

「そうだよ。オマタが俺のツバでベットベトだ。ンー……」

 痛みに耐える悠香梨の目の前で、ヒゲ面を窄めた口から泡垂れが糸を引いて落ちてきた。

「うわあぁっ!」

 逃れることができない脚の間に涎が落ちた。無理に身を躱そうとしたぶん、腹筋の持続力が一層失われた。補助をしている腕も、肘の角度が広がっていく。
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