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隷吏たちのるつぼ
第4章  第三章 詭謀の酬い
「ほぉら、ほら、もう一丁」

 再び唾液を溜め始めた征四郎が、体を揺すってきた。

「あうぐっ」

 落ちてくる泡垂れから身を捩るどころか、限界を迎えて真後ろへと倒れていった。一気に力を抜くと床に頭を打ってしまうから、腹筋が搾られても、ゆっくりと体を下ろさざるを得なかった。

「あーあ、垂れてってるよ」

 遂に腕が伸び切り、肩が床についた。坂道となった体を、唾液がトロトロと垂れ落ちてくる。

「おっ、可愛いおヘソが見えそお……」

 ドルマンニットが捲れ、裾が落ちてしまっていた。タンクトップとスキニーの間から、素肌が垣間見えている。

「あっ、ちょっ……!」

 腹部に外気を感じて、もう一度、背を丸めて頭を浮かせた。何とか片手を振り切って、ニットの裾を下げようとするも、腕の疲労も著しくて力が込められない。

 その目の前にまた、粘液の糸が垂れ落ちてきた。新たな泡唾が腹部へ迫る雫と合流する。液量を増した雫から、鼻先にプウンと口臭が漂った。

「あああっ!!」

 素肌をトロリとした感触が進み、汚水がヘソ穴へと流れ込んだ。

 のたうち回りたいの肌触りだった。そうだ、クロップドパンツにはもう、その涎がジットリと染まされている……。思い知った事実の悍ましさは、悠香梨に高く、悔しみに満ちた呻き声を漏らさせ、肩は再び地面へ落ちた。

 悠香梨が力尽きると、征四郎は体勢を保ったまま歩き始めた。後頭部を床から離すのが精一杯で、それとて痺れた腹筋と腕には猛烈な負担を強いた。髪や肩は救うことができずに床を引きずられる。

「おうら、よっと!」
「グウッ!」

 カーペットの布地から、冷たく硬い床に変わったのが触れるや、征四郎に手を離されて強かに腰を打ち付けた。スイートルームは、ソファセットが置かれているその一角だけは、大理石敷きとなっていた。すぐに両脇を抱えられて立たされる。久しぶりの地面がうまく踏めずヨロけていると、一人がけのソファへ無理矢理かけさせられた。

 強引に両腕が背後へ引かれ、背もたれを抱えるようにして回される。どこから取り出したのか、ビニールテープでソファごと縛られていった。

「っく……、な、何すんのっ」
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