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隷吏たちのるつぼ
第5章  第四章 口開く陥穽
(ま、そんな権限、俺には全くねえけど。小口の発注なら回せるかもな。その代わり……)

 着座を促すと、秀之はペースを合わせないと失礼に思ったのか、濃度を上げて渡したグラスを飲み干した。

「……しっかし、君の彼女、美人だよねえ」

 酔いに加え、思わぬ受注の引き合いに気がはしゃいだのか、ファミリーレストランで三人で対峙した時よりも秀之は照れた。お互いどこが好きかとか、どちらから告白したのとか、どちらからプロポーズしたのとか、冷やかして聞くと何にでも答えてくる。

「じゃあ、彼女の尻に敷かれてるんじゃないの?」
「あ、はは……。でも、頼りになるっていうか、そういうところも好きっていうか……」
「あーあ、ノロけちゃって」

 もう我慢できない。
 頭をかいた秀之の目線がこちらから外れた時、粉薬を入れてから水で割った。

 そして壁の時計へ目を向け、

「おっと時間だ。ごめん、ちょっとだけメール出してくるよ」
「あっ、お仕事なんだったら、ご迷惑ですから、僕そろそろ……」
「いやいや、すぐ済むから。だいぶん酔っ払ってるだろ? いいよ、泊まっていけば。今日は飲み明かそうぜ、な? 戻るまでにコレ、空けといてくれよ?」

 征四郎はリビングに秀之を残し、隣の部屋へと向かった。

 入るや否や、悠香梨の匂いがムンと充満していて頭が眩んだ。着衣、シャンプーやフレグランス、そして淫靡な炎に燻されて汗蒸した肉体そのものの香り。シーツに這う悠香梨が向けてくる瞳は、怨念と淫楽がない交ぜの、得も言われぬ潤みで揺らめいている。隣の部屋での会話を、ずっと聞いていたことだろう。牝の穴と、不浄の穴と、両方の疼きに耐えながら。

 我慢汁にまみれたブリーフを脱ぎ捨て、真上を向いた幹をしならせてベッドへ駆け上がる。
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