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隷吏たちのるつぼ
第6章  第五章 誨淫の舎
 言った。言ったが、こんな武器で打擲を受けたなら、今の小枝のように体が砕けてしまう。罰は欲しい。だが、受け続けたい。決して死罪など望んではいない。

「おら、いくぜっ」

 征四郎が鞭をふりかぶった。

「いやあっ!!」
 慌てて膝を伸ばして立ち上がると、前へと逃げた。「……あぐっ」

 首輪の存在を忘れていた。距離が足らず引っ張られ、後ろに一歩戻った足元ギリギリを鞭が叩いた。

 殺される……?
 そう疑われるほど、鞭の威力には一片の容赦もなかった。

「ひ……」

 両手を組んで祈るように身を縮め、小股に進む智咲の二の腕を鞭がかすめる。ほんの僅か触れただけなのに、焼けるような痛みが走った。

 どこかの大人っぽい女とは違って、未熟な自分は聞き分けも思慮も足らないから、主人の淫欲を満足させることができない。だから棄てられるのだ。だから壊れても惜しくも何ともないのだ。

「い、いやです。ゆるして、くださいっ。な、何でもしますっ!」

 鞭の疾風が吹きすさぶ中、命からがら叫んだ。何でもすると言っておきながら、逃げ惑っている己の矛盾には気づいていた。
 何と愚かなのだろう。何とかして赦されたい。今度こそ忠誠を誓い、畏き奴隷を目指すから──

 鞭がやんだ。

「ケツ出せ」

 救いの宣託が聞こえてきた。

「は、はいっ」

 智咲は逃げる間に落ちてしまったスカートを掴むと、もう一度、一気に腰までたくし上げた。山を洗うそよ風に撫でられるヒップを、パンプスをしっかりと踏ん張って背後へ見せつける。

「俺は、ケツを出せって、言ったんだけどな」
「……うわぁっ」

 慌ててパンストを剥がし、膝の同じ位置までショーツも下ろす。

「濡れてるぞ、智咲。ベトベトじゃねえか。怖がってたくせに濡らしてたんだな。この変態お嬢様が」
「は、はい……。へ、変態で、もうしわけ、ありません」
「あ? なに調子に乗ってんだ。シャレだよシャレ。変態なんかじゃねえだろ、おまえは。変態っつーのは人間に使う言葉だからな。……前かがみになってケツ突き出せ」
 征四郎が背後に近づいてくると、智咲は背すじを伸ばしたまま体を前へ倒した。「おいブタ、いくぜ?」
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