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隷吏たちのるつぼ
第2章 第一章 醒めゆく悪夢

だがそれも、ありえない。
俯いて拒絶しようとした時、バッグの中で携帯が震えた。
「おい、おっせーよっ。連絡入れろっつったろっ!」
「す、すみません」
「んで? オプションはっ?」
「そ、その……。て、て、こき、です」
出るなり罵声を浴びせられて縮こまったところへ強く質されて、思わずそのまま伝えてしまった。
「おー、そんで?」
「それ、だけです」
「はぁ? 少なくね? まさかNG出しまくってんじゃねーだろうなっ。バカかおめー」
「ううっ……」
嗚咽を漏らした智咲を見て、男はベッドに座ったまま口元へ両手を添え、
「怒んないでーっ。早くプレイしたいから、これでオーケーしてくださーい」
と、電話の向こうへ呼びかけた。
「……一万三千円貰え。ちゃんとお客さんに礼言っとけよっ」
舌打ちが聞こえて電話が切れる。
「おいくら?」
「い、いちまん、さんぜん……」
男は札入れから一万円札を二枚出して手渡した。携えてきたクリアケースから釣り札を取り出そうとすると、体の前で手を振る。
「いいよ。入店記念のチップチップ。それよりさ、ほら、タイマー、セットして、ここおいでっ」
辛抱たまらない様子で、自分の隣を手のひらで叩いている。チップを固辞しようとした智咲だったが、うまい言い方が出てこずに唇を結び、受け取った紙幣を仕舞った。タイマーをスタートさせ、なるべく男から距離を取って腰を下ろす。もう一度立てと言われてもできないほど、膝が震えていた。
「ああ、そんな震えちゃってぇ。可愛いねぇ、チサトちゃん。もぉ、こんな可愛い子のお初に入れるなんて、超ラッキーだよぉ。俺、清楚なお嬢様大好きなんだよね。今まで行った風俗の中でもさ、ダントツ可愛いよ、チサトちゃん」
近くに来ると更に声音が気色悪くなった男が褒めちぎったが、当然のことながら、智咲は全く和まなかった。
(う……)
手を上げただけで、部屋に入る時にドサクサ紛れに触れられた感触が思い出されて身を固くした。だが、男が触れたのは自分のベルトのバックルだった。
「ていうか、チサトちゃんって、ほんっとーに、バージンなの?」
カチャカチャという音。智咲は面を伏せた。ジジジとファスナーを下げる音。男は気色悪い声音で、ねぇ、ねぇ、と繰り返し問うてくる。
俯いて拒絶しようとした時、バッグの中で携帯が震えた。
「おい、おっせーよっ。連絡入れろっつったろっ!」
「す、すみません」
「んで? オプションはっ?」
「そ、その……。て、て、こき、です」
出るなり罵声を浴びせられて縮こまったところへ強く質されて、思わずそのまま伝えてしまった。
「おー、そんで?」
「それ、だけです」
「はぁ? 少なくね? まさかNG出しまくってんじゃねーだろうなっ。バカかおめー」
「ううっ……」
嗚咽を漏らした智咲を見て、男はベッドに座ったまま口元へ両手を添え、
「怒んないでーっ。早くプレイしたいから、これでオーケーしてくださーい」
と、電話の向こうへ呼びかけた。
「……一万三千円貰え。ちゃんとお客さんに礼言っとけよっ」
舌打ちが聞こえて電話が切れる。
「おいくら?」
「い、いちまん、さんぜん……」
男は札入れから一万円札を二枚出して手渡した。携えてきたクリアケースから釣り札を取り出そうとすると、体の前で手を振る。
「いいよ。入店記念のチップチップ。それよりさ、ほら、タイマー、セットして、ここおいでっ」
辛抱たまらない様子で、自分の隣を手のひらで叩いている。チップを固辞しようとした智咲だったが、うまい言い方が出てこずに唇を結び、受け取った紙幣を仕舞った。タイマーをスタートさせ、なるべく男から距離を取って腰を下ろす。もう一度立てと言われてもできないほど、膝が震えていた。
「ああ、そんな震えちゃってぇ。可愛いねぇ、チサトちゃん。もぉ、こんな可愛い子のお初に入れるなんて、超ラッキーだよぉ。俺、清楚なお嬢様大好きなんだよね。今まで行った風俗の中でもさ、ダントツ可愛いよ、チサトちゃん」
近くに来ると更に声音が気色悪くなった男が褒めちぎったが、当然のことながら、智咲は全く和まなかった。
(う……)
手を上げただけで、部屋に入る時にドサクサ紛れに触れられた感触が思い出されて身を固くした。だが、男が触れたのは自分のベルトのバックルだった。
「ていうか、チサトちゃんって、ほんっとーに、バージンなの?」
カチャカチャという音。智咲は面を伏せた。ジジジとファスナーを下げる音。男は気色悪い声音で、ねぇ、ねぇ、と繰り返し問うてくる。

