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隷吏たちのるつぼ
第2章 第一章 醒めゆく悪夢

「くさか、ってこんな字書くのかよ。名前なんて読むんだこれ……あー、ゆかり、ね」
液晶のバックライトを浴びる征四郎の眼は真剣そのものだったが、程なくして肩の力を抜き、「んー、これが? ちょっとイマイチじゃない?」
悠香梨はリクルートスーツを着て真面目な顔をしていると、目つきがマイナスポイントとなって、写真写りで損をするタイプだった。現物を、スタイルも含めて全身トータルに見てこその姿を、本庁に赴いた時に見かけたことがある芳賀は、彼女の名誉のためにフォローを入れてやろうとしたが、
「そんで?」
と、征四郎の興味は既にもう一人へと移っていた。
「ええ、本山という子ですよ。実はウチに配属になりました」
「へぇ、やったじゃん。どれどれ……」
いかにも出自の良さが窺える上品な智咲は、写真であっても征四郎を喜ばせるだろうと思った。別に人事権が芳賀にあるわけではないから何の手柄でもないが、そんな子が配下へ来たのが誇らしく、まるで弟に小遣いでも与えるような気持ちで征四郎の言葉を待った。
ファイルが開かれる。
だが、いくら待っても賛嘆は聞こえてこなかった。
「征四郎さん?」
背後から芳賀が訝しんでも、
「あ、ああ。うん……」
と、経歴を読み込んでいる。好色だった眼光は、驚きへと変わっていた。
「どうしました?」
「いや……。芳賀ちゃん、この子、N出身の子じゃないんだ?」
「ええ、県外採用ですね。実家は神奈川の、横浜だったか、あっちの方ですよ。東京の大学を出てます」
「へぇ、名前は……、ちえみ、ちゃん、か……」
要領を得ない芳賀に構わず、征四郎は何に納得したのかはわからぬ深い頷きをすると、いつの間にか溢れてきていた涎で舌舐めずりし、驚く以前に比べて数段淫欲を滾らせた目で写真の智咲へ見入った。
液晶のバックライトを浴びる征四郎の眼は真剣そのものだったが、程なくして肩の力を抜き、「んー、これが? ちょっとイマイチじゃない?」
悠香梨はリクルートスーツを着て真面目な顔をしていると、目つきがマイナスポイントとなって、写真写りで損をするタイプだった。現物を、スタイルも含めて全身トータルに見てこその姿を、本庁に赴いた時に見かけたことがある芳賀は、彼女の名誉のためにフォローを入れてやろうとしたが、
「そんで?」
と、征四郎の興味は既にもう一人へと移っていた。
「ええ、本山という子ですよ。実はウチに配属になりました」
「へぇ、やったじゃん。どれどれ……」
いかにも出自の良さが窺える上品な智咲は、写真であっても征四郎を喜ばせるだろうと思った。別に人事権が芳賀にあるわけではないから何の手柄でもないが、そんな子が配下へ来たのが誇らしく、まるで弟に小遣いでも与えるような気持ちで征四郎の言葉を待った。
ファイルが開かれる。
だが、いくら待っても賛嘆は聞こえてこなかった。
「征四郎さん?」
背後から芳賀が訝しんでも、
「あ、ああ。うん……」
と、経歴を読み込んでいる。好色だった眼光は、驚きへと変わっていた。
「どうしました?」
「いや……。芳賀ちゃん、この子、N出身の子じゃないんだ?」
「ええ、県外採用ですね。実家は神奈川の、横浜だったか、あっちの方ですよ。東京の大学を出てます」
「へぇ、名前は……、ちえみ、ちゃん、か……」
要領を得ない芳賀に構わず、征四郎は何に納得したのかはわからぬ深い頷きをすると、いつの間にか溢れてきていた涎で舌舐めずりし、驚く以前に比べて数段淫欲を滾らせた目で写真の智咲へ見入った。

