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隷吏たちのるつぼ
第2章 第一章 醒めゆく悪夢

正直、こういった事業は特定業者に対して──その殆どが篭山開発の関連会社であることは、県外出身者の智咲でも一ヶ月のあいだにわかっていた──便宜を図り、優遇した入札を行い、モノさえできれば市も業者も「後は知ったことか」というものだと思っていた。
しかしこうやって議論をし、県に対して言うべきことは言おうとする姿勢を知って、智咲はワーキンググループにやりがいを期待した。
意見を求められ、自信はなかったが思うところを述べると、否定されることなく、その観点で深耕しようとしてくれる。メンバーの一人として、意見を尊重されるのが嬉しく、あっという間の二時間が過ぎていった。
「──では次回は、今日一番懸念点が出た、農業への悪影響に焦点を当てて話し合いましょう。環境保全課の人間を呼んだほうがいいかもしれませんから、手配しておきます」
芳賀はそうまとめると、「では本日はここまでということで。……えっと、十九時に『すがい』を私の名前で取ってますから、お時間になったら、現地にお越しいただければと思います。それでは」
散会が告げられると、参加者が席を立ち始めた。
智咲が率先してプロジェクターの片付けをしていると、芳賀が声をかけてくる。
「本山さん。悪いんだけど、今日の議事録、作っといてくれるかな?」
「はい、わかりました」
「悪いね。時間が空いたときでいいから」
「時間、いっぱい空いてますから」
「おいおい」
上機嫌のあまり、思わず言ってしまって、笑顔でごまかした。
ケースに収まるように電源コードを両手で巻き取ろうとするも、後片付けなどあまりしてこなかった智咲は、なかなか上手くできなかった。その様子を微笑ましく見ていた芳賀は智咲からコードを引き取り、
「それから、今日の懇親会、来れるかな? すまない、言っておくのをすっかり忘れていた」
「ええ、大丈夫です」
「そうかい? 助かるよ」
芳賀は声を密め、「何せオジサン……、オジイサンもいるな、そんなのばっかりだからね。本山さんみたいな子がいると場が華やいで助かるんだ」
セクハラ紛いの発言だったが、優しい上司が助かると言うのであれば、と智咲は快く承諾した。
しかしこうやって議論をし、県に対して言うべきことは言おうとする姿勢を知って、智咲はワーキンググループにやりがいを期待した。
意見を求められ、自信はなかったが思うところを述べると、否定されることなく、その観点で深耕しようとしてくれる。メンバーの一人として、意見を尊重されるのが嬉しく、あっという間の二時間が過ぎていった。
「──では次回は、今日一番懸念点が出た、農業への悪影響に焦点を当てて話し合いましょう。環境保全課の人間を呼んだほうがいいかもしれませんから、手配しておきます」
芳賀はそうまとめると、「では本日はここまでということで。……えっと、十九時に『すがい』を私の名前で取ってますから、お時間になったら、現地にお越しいただければと思います。それでは」
散会が告げられると、参加者が席を立ち始めた。
智咲が率先してプロジェクターの片付けをしていると、芳賀が声をかけてくる。
「本山さん。悪いんだけど、今日の議事録、作っといてくれるかな?」
「はい、わかりました」
「悪いね。時間が空いたときでいいから」
「時間、いっぱい空いてますから」
「おいおい」
上機嫌のあまり、思わず言ってしまって、笑顔でごまかした。
ケースに収まるように電源コードを両手で巻き取ろうとするも、後片付けなどあまりしてこなかった智咲は、なかなか上手くできなかった。その様子を微笑ましく見ていた芳賀は智咲からコードを引き取り、
「それから、今日の懇親会、来れるかな? すまない、言っておくのをすっかり忘れていた」
「ええ、大丈夫です」
「そうかい? 助かるよ」
芳賀は声を密め、「何せオジサン……、オジイサンもいるな、そんなのばっかりだからね。本山さんみたいな子がいると場が華やいで助かるんだ」
セクハラ紛いの発言だったが、優しい上司が助かると言うのであれば、と智咲は快く承諾した。

