この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
隷吏たちのるつぼ
第2章  第一章 醒めゆく悪夢



 居酒屋だとばかり思っていたが、『すがい』は山あいの小さな料亭旅館だった。広い座敷に通されると、座卓には豪勢な料理が並んでいた。

「ほー、着替えても可愛らしいねぇ」

 先に着いていた元民生委員の老人は、私服に着替えて現れた智咲を見て微笑んだ。これも、セクハラと言えなくもなかったが、全く邪心が感じられなかったから、久々に人と飲めて嬉しがっている老人の酌をし、話相手になってやっていた。

 しばらくすると廊下をドスドスと歩く音がして、いきなり襖が開いた。

「遅れて悪い!」
 現れたのはノーネクタイにワイシャツ姿の男だった。「よぉ、じっちゃん、久しぶり、元気かよ!」

 ビールは最初の一杯だけ、すぐに燗を嗜んでいた老人が、

「おお、征四郎、久しぶりだなぁ。ちゃんと仕事しとるのか?」

 と呆れ顔を隠さずに言った。

「やってるって、そんな心配すんなよ」
「信用できんなぁ。……あいつは元気なのか?」
「親父? ああ、元気、元気。まだ色々口挟んできやがるぜ」
「それはお前がしっかりせんからだ。あんまり周りの人間に迷惑かけんようにしろよ。前みたいに──」
「いや、じっちゃん、わかってるから。ほらほら、飲みな飲みな」

 征四郎は老人の小言を遮って酌をした。智咲には話題を逸らしたように見えた。

 そして、入ってきた時から気づいていたろうに、わざとらしく、

「……おっ、女の子がいる。じっちゃんも隅に置けねえな」

 と、徳利をこちらにも差し出してきた。

「い、いえ、私は結構です。あまり飲めないので」
「そう言うなって。あまり、ってことは、ちょっとくらいは飲めるんだろ? それとも俺の酒が飲めねぇの?」
「そういう意味じゃ……、わ、私、車なので」

 会館に車を置いたまま、芳賀とタクシーでやってきていた。思ったより遠く、智咲は今日の帰りと明日の朝のタクシー代のことを考えると、アルコールは口にせず、酒席が終わってから職場へ戻って車で帰ろうと考えていた。

「大丈夫、タクシーチケットあげるよ。今日は飲み放題食い放題。ここはウチの交際費で落ちるからさ」
「そんなわけには……」
/188ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ