この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
隷吏たちのるつぼ
第2章  第一章 醒めゆく悪夢
「いやです、私。あの人、なんだか苦手です」

 話が通じるだろう上司へ、征四郎の印象を正直に伝えた。

「まぁ、ああいう人だから、本山さんの気持ちはわからないでもないよ。でも、篭山開発の御子息だからね。あまり揉めたくない、ってのはわかってくれよ」
「でも……」
「何かあったら私が何とかする」

 芳賀が背を伸ばして言ったから、智咲は引き下がらざるを得なかった。

 座敷に戻ると、

「あー、じっちゃんもうベロベロだ。帰ったほうがいいんじゃねぇのぉ?」

 くしくも征四郎が言い出した。対座にいたメンバーが、自分たちの帰り道なので二人で抱えて連れて帰ると言う。

「あ、そ。よろしく」

 征四郎が二人に向かって言うと、彼らは決意めいて小さく頷いたが、智咲からは見えていなかった。

「じゃ、お開きだな。──智咲ちゃん」

 前後不覚の老人が両脇を抱えられ始めると、征四郎が声をかけてきた。ちゃん付けで呼ばれる悪寒を我慢して、恬淡と返事をする。

「最後、一杯だけ、乾杯しようよ。ね? 今日一回も乾杯してないじゃん」

 しつこい。智咲は息を静かに吐き、

「ですから、私、車なんで」

 す、を付け加えるのも忘れてしまった。

「だと思ってさ、ウーロン茶、頼んどいたから。ね? 一杯だけ」

 征四郎の前にビールコップに注がれたウーロン茶があった。芳賀を見ると、頼む、という顔をしている。

「わかりました」

 渋々智咲が斜座に膝をつき、コップを差し上げると、

「一気ね、一気」

 征四郎が猪口を鳴らした。これさえ飲めば……智咲は仕方なく、喉を何度も開いてウーロン茶を流し込んでいった。あまり冷えていなくて妙に苦い。

 ふー、と息をついてコップを置き、

「……おつかれさまでした。本日はありがとうございました」

 と言うと、老人のモゴモゴとした独り言が聞こえてきた。

 階段から落ちたら一大事だし、靴を履かせたり、タクシーへ乗せたりするのも大変だろう。手伝おうと思い、立ち上がった。
/188ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ