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隷吏たちのるつぼ
第3章  第二章 遅れた服罪
「男の同期にも呼ばれるの? そんなの、たしかにヤだな」
「どんだけ心配性なのよ」
 悠香梨は笑って恋人の頭を撫で、「もっと、ドッシリしてもらえませんかね、ダンナ様?」
「だってさ……、この前飲みに行った時、男の同期もいたんでしょ?」

 秀之が悋気に苦しまないよう、遊びに行く前と行った後には、必ず教えるようにしている。

「いたよ。え、そこ心配? もっと私のこと信じてよ」
「信じてるよ。でも、ユカリンを口説く側には関係ないじゃん」
「ま、そうだけどね。でも安心して」
 悠香梨は太一を誘った時のことを思い出し、「そいつは、一緒に行った女の子を狙ってんの」

 飲みに行くから運転手として来い、と姉御口調でメッセージを送ると、太一は、なんでだよ、と一旦留保する返信をしたくせに、智咲の名を出すとあっさり了承してきたのだった。あまりの返信の早さを思い出して、ふき出したら煙で咽せた。

「大丈夫? ……前にユカリンが言ってた子?」
「ん……。……そーそー、本山ちゃん。めちゃ可愛いよ。都会出身だし、家金持ちっぽいし、世間にすれてないし、守ってあげちゃいたくなるしで、もー、ほんと、お嬢さんって感じ」
「へぇ……。昔から頼りなさげな子、好きだもんね」
「秀之もそうだったんですけど?」
 悠香梨はまた、ブッと咽せる羽目になり、「……でも本山ちゃんは今まで見た子でダントツだな。なんかね、大人の女になろー、しっかりした女の人になろーって頑張ってる感じ? ウチ、弟じゃん。あんな妹いたら、お姉ちゃん、もう何でもしてあげちゃいたい」
「そこまで言うなら、相当だね」

 悠香梨はつられて笑う秀之に向かって横身に座り直すと、

「秀之だって、本山ちゃん見たらキューンてしちゃうよ? 同期の中じゃ私が一番イケてるだろー、って思ってたのに、本山ちゃんに会った瞬間、こりゃダメだって思ったもん」
「そんなわけないじゃん」
「そお? 私にはない可愛さ持ってるよ?」
「そんなことない」

 秀之が真顔戻って見つめてきた。

「俺にとってはユカリンが世界で一番可愛い」
「……よしよし。正解」
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