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隷吏たちのるつぼ
第3章  第二章 遅れた服罪
 その一方で、肉体は強く慰撫を乞うてきて、指を離してもまた、すぐに触れなければならないほどの煩悶に悩まされた。カーテン向こうが白み、雀の囀りが聞こえ始めるまで。緩慢に起き上がると、夜もすがらイジくったショーツは、またがみの高い位置までしっとりと濡れていた。おそろしく疚しい気持ちで下着を履き替え、身支度を始めたのだった――

 開館しても、誰も入って来なかった。シンと静まり返ったエントランスホールで、みどりと並んで座っていた。

 黙っていると様々な事が頭の中に渦巻く。
 何より智咲を苛んでくるのは、レイプの被害に遭ったというのに、一日経ってもまだ、警察に駆け込むことも、誰かに相談することもしていないことだった。

 自分は何をしているのだろう。とっととあの卑劣な男の罪を訴え、破滅させてやればいいのに。

 利用者から問い合わせがあった時に庁内システムを調べるために、カウンターにはPCが設置されている。職員向けのポータル画面には、「セクシャルハラスメント相談窓口」の連絡先もある。セクハラでは済まされない暴行を受けたわけだが、ここへ通報してもいいはずだ。

 しかし智咲の操作するマウスポインタはリンクを通り過ぎ、メニューからワープロソフトを選択して新規書類を表示させた。ワーキンググループの議事録を上司に頼まれている。

 みどりは何も話さない。昼休憩まで、無言で、微動だにせず座っているのだから、むしろ感服する。

 手元のメモを眺めつつ、会議での発言録を再編しようとするのだが、どうしても夜の出来事に邪魔をされて、議論の流れをうまくしたためることができなかった。

 目を覚ますと唇を貪っていた醜貌。手足を縛られ、バストを揉まれ、体の中に指を捻じ挿れられた。そして、次には……。

(う……)

 制服のスカートの中が騒めいた。

 征四郎が貫いてきた時に感じたのは、痛みだけではなかった。いや、痛みは霞んだ。
 薬を塗られて、長い時間放置されて、溶解しそうになっていた体の中を、硬い肉槍で磔刑にされて、自分は……。

「よう」

 突然声がして前を向いた智咲は、ひっ、と短い悲鳴をあげた。まさに脳裏に浮かび上がっていた男が立っていた。

「あ、う……」
「智咲の制服姿、なかなかソソられるじゃん。隣のババアとはえらく違うな」
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