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隷吏たちのるつぼ
第4章  第三章 詭謀の酬い
(それにしても……)

 ふと智咲のことが思い出された。あの日、昼食を一緒にとる約束をしていたのに、急用の一言でキャンセルされた。

(また飲みに誘ってあげよう。きっとまだ悩んでるな、あれは)

「──ちょっと、悠香梨ちゃん。聞いてる?」

 下の名前に「ちゃん」をつけられた悪寒が悠香梨の意識を窓口相談へと引き戻した。
 気安く呼ばれた憤怒を抑え込み、

「そういった優先はできないんです」
「えー、なんだよ冷てえなぁ。てか、ここだけの話をなんだけどさぁ」

 同僚たちは会話に聞き耳を立てているだろう。特に課長補佐はハラハラしながら行く末を見守っているに違いない。そんな彼らを避けるかのように、征四郎が口元へ手を添えて前のめりになった。口が臭い。もちろん悠香梨は、密め声を聞きとるために、こちらからも身を乗り出そうとはしなかった。

「このガキ、俺の子供かもしれないんだよね。ま、認知なんてできないんだけどさ、かわいそうじゃん?」
「……は?」
「コイツ、ソープで働いてたんだけど、店外誘って、高い飯食わせて、高級ホテルにも連れてってやったんだ。そこまでさせといて、ヤッたらデキたとか言い出したんだよ。ナイでしょ? 風俗で働く女が、妊娠してんじゃねーよっての」

 征四郎は続けてクククと笑った。目が、悠香梨も笑うことを期待している。

 ヘタクソ過ぎる笑い話だった。
 この女とは全く面識がないが、女全員を馬鹿にしたような発言に頭に血が上った。それが事実なら、さっさと認知して、お前が養育してやれよ。当然の指摘が喉まで出てきて、カウンターに置いていた手を、色が変わるほど握りしめた。

「……そういった事情は考慮できません」

 何とか声帯を震わせて言うと、征四郎がその拳へ手をかけてきた。ありえない行動に腕を引こうとしたが、グッと力を入れられる。

「じゃさ、生活保護の申請のこと教えてよ」
「窓口が違います」

 何度も引くが、征四郎は離そうとしない。
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