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隷吏たちのるつぼ
第4章  第三章 詭謀の酬い
「部屋に料理を運ばせるんだよ。悠香梨ちゃんも誰かに見られたり、話を聞かれたりするより、そっちのほうがいいでしょ」

 暫く睨んでいた悠香梨は、両肩を大きく動かして息を吐くと、また斜身を向けて階数表示を見上げた。

 コツコツと靴音が聞こえてきた。白のデニム地に包まれた長い脚の先が床を蹴っていた。どうも悠香梨は、苛立ちが仕草に出てしまう質らしい。くるぶしが見えるということは、その下は素足だ。バストを抱えるように腕を組んでいる。ニットはゆったりとしているが、シワの流れが中に隠されているであろうボディラインを想起させる。

 悠香梨目当てで市営住宅課を訪れた時、ホテルへ誘った征四郎へ向かって、体を引きがちだった悠香梨が初めて、カウンターに身を乗り出してきた。その時に着ていたのはシャープなラインのブラウス。角度がついた襟元から悩ましい起伏が覗いた。

 鼻息荒く目線を集中させた征四郎の耳に、

「やめてよ、オッサン。顔見て物言って?」

 密めた声が聞こえて、暗みに浮かぶ肌が去っていった。あまりの悪言に驚いた征四郎が顔を上げると、悠香梨はもう立ち上がろうとしているところだった。説明は以上です、と言った唇が結ばれた形は、明らかな嘲笑だった。

 世の男誰もがときめくような智咲をモノにしたことで、自認しているはずの不細工面を忘れるほど気が大きくなっていたのは否めない。今なら別の女を引っ掛けることもできるんじゃないか、という根拠のない期待は、悠香梨によって完膚なきまでに打ち砕かれた。

 強い憤りが湧いた。
 しかし今となっては、それすらも劣情を煽るエネルギーになっているように思える。

「それとも」
 エレベーターが開き、廊下へ出た。「食事しながら話し合いなんかしなくたって、もっと早く終わらせる方法があるぜ」
「……」

 勝手に先を歩く悠香梨は何も答えず、そのままスイートルームの前に着いた。辛辣な女は、ドア前に立ってこちらを振り返っている。このドアの向こうは、車の中よりもずっと遮断された、二人きりの空間だ。

「ヤ、ヤラせてくれたら、あの件はやめさせてやるよ」

 ドアを開いたが、まだ悠香梨は入っていない。しかし我慢していた言葉が先に出てしまった。

「あの件?」

 悠香梨が目を細める。
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