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隷吏たちのるつぼ
第4章  第三章 詭謀の酬い
「彼氏の工場への圧力だよ。俺が言えば、今すぐにでもやめさせることができる」
「やっぱり圧力をかけてたんですね。……で? その代わり、どうしろって言うんですか?」
「悠香梨ちゃんとエッチさせてよ、っつってんの。わかるだろ、ほら。こんな勃っちまってんだからよお」

 征四郎は隠していた腕を上げてズボンの前を見せた。

 勃起を見ても、腕組みした悠香梨は片眉を吊るだけで、

「……秀之の工場への、篭山開発絡みの発注を継続させるために」
 猫目て睨みつけてくる。「嫌でも、篭山征四郎さんと、セックスしろってことですか? 脅迫ですよ? これって」

「ああ、そうさ」
 強い目線にゾクゾクした征四郎は、吃り、上ずって、「か、篭山に、つ、潰されたくなかったら、セ、セックス、……い、いやっ、オマ×コ、ヤラせろっつってんだよっ」

 ──しばらく対峙していたが、やがて悠香梨は決心したような大きな息を吐いてから、また髪の香りを振りまいて颯爽と中へと入っていった。

(うほっ)

 ほくほくと部屋に入ると、生意気な女は広い部屋の中央で腕組みをしたまま、肩幅に足を開いて尊大に立っていた。

「あんたも終わりね」

 悠香梨は突然、相談カウンターの時と同じく、完全に征四郎を見下した声音になった。口元にも、同じ嘲笑を浮かべている。

「お?」

 肘にかけていたバッグから携帯を取り出すと、こちらへ画面を示してきた。中央の横線が、スピーカーからの音に反応して波打っていた。流れてくるのは、今しがたの会話だった。

「録音しちゃった。脅迫の証拠。……ううん、強姦未遂かな。しっかり録れてる」
「な……」
「早く会社に電話かけて、発注再開を指示して。やらなきゃこれを警察にも、篭山開発にも送ってやるから。ほらっ、早く!!」

 命ずる悠香梨の声は、やまのくらし会館での説明会で、ステージ上から市民を黙らせたのと同じ威勢だった。恫喝を一身に浴びた征四郎は、悠香梨の見張る前で調達部門へ電話を入れ、発注の再開を指示した。

 それを見届けた悠香梨は、携帯をバッグにしまい、歩き始める。

「じゃ、帰る」
「え、しょ、食事は……?」
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