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鬼ヶ瀬塚村
第24章 餓鬼
僕には何故一郎さんが悲しそうな顔をしたのかわかった。

彼は宗二さんを狩らなくてはならないのだ。
掟に従って。

義理の兄に致命傷には至らない傷を与えなければならないのだ。

弘子さんが言っていた…秘密を喋った村人を狩るのは村で選ばれたマタギだけだと。
寸分の差で矢が致命傷を与えないように。
一流のマタギだけが宗二さんを狩るのだ。

『一郎さん、あの…』

僕の少し前を歩く彼の細い背中に僕は声をかける。
一郎さんの長い髪は規則正しく馬の尾のように左右に揺れていた。

『なんだぁ?』

『…宗二さんへの…御咎めとか言うやつは…何人でやるんですか?』

一郎さんはしばらく無言のまま歩いていたが、立ち止まり僕に振り返った。

『村長次第だ…』

一郎さんは悲しそうに呟いた。

『真理子さんが決めるんですか?』

『正確には村長の占いで決めるんだっぺ。今、村で清めを貰える推薦されたマタギは今年18人だ…その18人がら村長の占いで人数を決めるんだば』

『18人も…?』

『昔は倍以上おっだわ…今回は最低で3人、最高で18人…村長の占いの結果次第だっぺよ。だがら数が少なげれば僕は………』

『やらなくて済むかもしれないんですね?』

『…僕ばくじ運悪いがら…』

彼はそれだけ言うと後は黙ったままだった。
僕も何も言えなくて歩き始めた彼に続いた。
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