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鬼ヶ瀬塚村
第24章 餓鬼
黙ったまま歩いていくと、急に木々の影が途切れ途切れになり始めた。

『ここだっぺよ』

傾斜の上には木も竹も一本も生えていない平地が広がっていた。
広さで言えばサッカーのフィールド2つくらいか…かなりの面積だった。

人工的に手入れされているのか膝の高さ程度で草が切り揃えられている。

『この高さが一番"獲物"の逃げ足を鈍らせるんでずわ…』

『………』

突然前方の草がガサッと揺れた。
僕はビクッとして無意識に一歩後ずさった。

『隠れんぼが?』

と、一郎さんが草が揺れた辺りに声を向ける。

『1人で隠れんぼがでぎるんなら、オレに教えでぐれッ!』

聞き慣れた声がして、草の中からショートカットの後ろ姿が現れた。
後頭部に緑色の葉が貼り付いている。
そして僕から見て右側の耳たぶにはフープ状のイヤリング…優子だった。

『何じどっだんじゃばぁ?』

一郎さんが大股で草を掻き分けるようにして優子に近付く。

『何もじどらんば。ごやっで寝っごろがっでよ、お天道様見でだだげだっぺ』

ガサッと音を立てて優子の頭が再び草の中に消える。

『ごやっでよぉ、大地に大の字になっでるどよ…ノブの声が聞ごえるんだ』

『え…?僕の声?』

僕も草を掻き分けながら寝そべる優子に近づいた。

『違うっぺよ、足の早いノブだ』
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