パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第24章 餓鬼

『あいづばオレより足が早がっだんだ。だがらオレばあいづがお気に入りだっだんだ』

一郎さんは黙っていた。

『ノブが死んじまっだ時ばよぉ…オレな…』

優子は笑顔を太陽に向けたまま続けた。
その様子を僕と一郎さんは見下ろしていた。

優子はボーイフレンドを失ったのだ。
うっかり喋ってしまった足の早いノブは部外者もろとも死の処分を受けたのだ。

『オレばな…』

優子の声に彼女の胸の痛みが伝わってくるようで僕はただ優子を見下ろしているだけだった。

弘子さんは足の早いノブが死んだ時に優子は死を理解出来ずに笑っていたと言っていた。

けれど、きっと優子は優子なりに悲しかったのだろう。

そんな彼女に対して僕の口からは慰めも優しい言葉も出てこなかった。
かける言葉が見つからなかった。

優子は真っ直ぐとまるでヒマワリのように太陽を見上げたまま続けた。

『…嬉しがったぁ…』

え…ッ？

『あんな韋駄天様みでぇによ、足の早えぇノブの魂を腹いっぺぇ頂いぢまっでよぉ、ぎっど今のオレばノブの力で誰よりも足が早えぇばずだ…』

『…優子、もうええッぞの話ばすんなッ！』

『オレはよぉ、おっちゃんよぉ、あんだの友達の小太郎おじさんによぉ、感謝しでるんだっぺ』