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鬼ヶ瀬塚村
第25章 奴奴
真理子さん、一郎さん、吾郎さん、そして僕の前でワゴン車は停車した。

フルスモークで車内は見えない。運転席も当然見えなかった。

奴奴が荒岩家の庭先にやってきたのだ。

みんな黙っていた。

千葉県ナンバーだった。

ガチャッと静かに、そして怯えるように運転席側のドアが開いた。

顔面がまるで白塗りしたように蒼白した若い男だった。
30代手前か、前半くらいの男だ。
白いポロシャツにジーンズ、短く刈り上げられた髪は汗で頭皮が透けて見えていた。
顔も汗びっしょりで、両目は真っ赤に充血し血走っている。

『あの………』

男が言う。

『………処理…頼めますか?』

目がギョロギョロ動きまわり、僕達4人を見る。
彼の目には僕も鬼に見えるのだろうか?
一昨日村に来たのに、もう何十年とここに居る様な気持ちだ。
来たばかりとは言え、彼にはきっと僕は立派な"村人"だ。

『見せて貰えますか?』

真理子さんが言う。

『…あッ…はい…あの…バラバラにしようとは…したんですが…脂肪が固くて………あの…』

男は震えた声で言う。

『構いませんよ。査定させて頂きますね』

査定…まるで死体を物のように言う真理子さん。
口元は柔らかく微笑んでいたが、目蓋が若干痙攣していた。
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