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第25章 奴奴

『いっちゃん、達弘呼んできて？だぬき運んで欲しいのよ』

『わがっだ。信人ぐんにも手伝っで貰おうが？初めてだじな』

僕の心臓は痛い程血流と血圧を上げた。
一郎さんの言葉に汗がどっと全身から出た。
鼻が大きな音を立てながら酸素を吸い込んでは吐いた。
僕が死体を運ぶ？

咄嗟に首を横に小さく振った。
もう震えてる様に見える程左右に数cmづつ高速で。
無意識レベルで振られた首は拒否を示した。
真理子さんがそれを見てニコッと笑う。

どうしようもなって真理子さんが遠い遠い存在に思えた。
僕の両隣にいる一郎さんも吾郎さんも、今朝あれだけ一体感を感じていたのにとてつもなく遠い。

『ううん。ノブには私と一緒にいて貰うわ。あ、そうそう下田のこーちゃんと浅田の治朗ちゃんも今日手空いてると思うから、手伝って貰って来て』

真理子さんはそう言って僕に再びニコッと微笑んだ。

助かった…素直にそう思った。
死体なんて怖くて見たくない。

『わがっだっぺ。達弘ぐん釜で瓦焼いどるだろがら行っで呼んでぐるば』

一郎さんは当たり前のように言ってから"じゃッ"と奴奴に軽く会釈し歩いて行った。

『ワジば動げる者に伝えでぐる。あど、入り口めがみ置いでぐるば』

『無理しないでね、お祖父ちゃん』

吾郎さんも奴奴に頭を下げるとヒョコヒョコと歩いていく。