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鬼ヶ瀬塚村
第25章 奴奴
『は…話さなければなりませんか?』

奴奴が不安そうに言う。
一刻も早くここを立ち去り、人生に戻りたいのだろう。

『はい。これは決まりですので…内容によっては処理を受理できません。話して下さい』

『わかり…ました…』

奴奴は手で額の汗を拭うと静かに話始めた。
まるで刑事ドラマのクライマックスのようだった。
けれど僕も真理子さんも刑事ではない。
鬼、彼の共犯になる人間なのだ。

『彼女は僕の…恋人でした。三年前から交際していて………結婚するつもりでした。少し精神的に弱い女性で…支えになりたかったんですが………』

奴奴の両目に涙が滲むのが見えた。

『彼女は…江利香は…人格障害があって…病院に通院していました。自傷癖や自殺願望があって………僕は…江利香を守りたくていつも側に…いました………』

『続けて下さい』

『仕事も…彼女はパートを少しだけで………僕が経済的支援をしていました。車も買ってあげて………けど、江利香には別の恋人がいました………』

浮気か…。

『僕は……本命の恋人では無かったんです』

奴奴が両手をギュッと目蓋に押し付けた。
震えている。
泣いているのだろう。

『彼女の手帳をたまたま見ました…そこには僕を嘲笑する文章がびっしり書かれていました………』
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