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鬼ヶ瀬塚村
第25章 奴奴
奴奴の言葉と涙には深い悲しみが染み込んでいた。
彼は罪を犯した。けれど、先に恋人である江利香さんが罪を犯していたんじゃないか。
…罪の連鎖だ。

『わかりますか…?どれだけ………好きだったか…彼女の為なら…時間も…体力も気力も…いくらでも使えました………お金も。それが…僕からの愛情でした………なのに…どうして………まさか別に男がいたなんて…思いもしませんでした………なんなんだ?どうしてなんだ?…ムカつく………腹立つ………どうして…?』

奴奴の目から涙がこぼれ落ちる。
それを必死で拭う姿に僕はなんだか胸が痛んだ。

彼は殺人者だ。
けれど、誰よりも彼女を愛していただけなんじゃないのか?
それを誰が責められる?
彼は恋をしていただけだ。彼女を守り支える事自体が彼自身をも守り支えになっていたはずだ。

きっと辛い日も彼女の存在で彼は生き残れてきたんだろう。
僕にはわかる。
彼は恋をしていただけだ、と。

『好きだっただけじゃん………好きだっただけじゃん………なんなの?どうしてなの?…僕の何がいけなかったの?………頑張ったじゃんか………』

奴奴の怒りや悲しみは不安定な言葉で座敷に浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返した。
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