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鬼ヶ瀬塚村
第25章 奴奴
真理子さんが引き戸を閉めようとした時だった。
奴奴は咄嗟に引き戸を手で止め、少し震えた声で言った。

『どれくらい…いなきゃ…駄目でしょうか?』

『後で迎えに来ます』

真理子さんは強引に引き戸を閉め、鍵をかけた。

『さてと、とりあえず受付はおしまいね』

真理子さんが言う。

『ノブ、行くわよ』

真理子さんは南京錠の鍵を指先でクルクル回しながら歩いていく。
僕は黙って彼女について行った。

『冷たいって思ったでしょ?』

不意に彼女が訊いてきた。

『ちょっとね』

『優しくしてたらキリないわ。少し冷たい位が仕事として割り切れるのよ』

『…そうなんだ』

『当たり前じゃない。誰だって好き好んでこんな面倒事巻き込まれたくないのが本音よ?まぁ、ノブは私のせいでドップリ巻き込まれたけど』

真理子さんはそう言って先程奴奴と話をした座敷へ入った。

『はぁ、疲れた』

そうしてちゃぶ台にもたれ掛かるようにして大人しくなった。
僕も彼女の隣に座った。

『ねぇ、真理子さん?』

『何よ?』

『話によっては処理を受け付けないって言ってたよね?』

『うん』

『どうしてなの?』

『それがうちのやり方だからねぇ』

『やり方?』

『そ、やり方よ』
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