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鬼ヶ瀬塚村
第25章 奴奴
『けど、彼の全てを受け入れてしまうのは被害者のだぬき…死者の命と人生を否定する事になるわ。仮にも殺されたのだから、そこを私達は理解して忘れてはなら無いのよ。奴奴を慰めると同時に私達は鬼神祭で死者を慰めるのよ』

『…中立なんだね』

『当然よ。私達鬼ヶ瀬塚村は弁護団体じゃないわ、あ・く・ま・で…処理を受け付ける事よ。さてと、なんとなくわかったかな?ノブに奴奴の話を聞かせたかったのよ』

『ん?何故?』

『奴奴に目の前で動機や気持ちを聞かせられたら…少しは村を理解してくれるかなって。私達の罪や私達の生き方を少しでもわかってくれるかなって?』

真理子さんはそう言っていつものようにニヤニヤした。

『さてと、ワゴン車の中掃除しなきゃね。ノブやってみる?』

『え…僕が?』

僕の手で一つの殺人事件が隠蔽されるのか。
まだ傍観者でしかない僕にとって、真理子さんのその一言は凄まじい力を持っていた。

『…やりなさいよ。あんたも村人Aなんだから』

村人A…確かに奴奴はこの村人Aの僕にも助けを求めているんだ。
真理子さん荒岩一族にでは無い、この鬼ヶ瀬塚村の人間全てに向こう50年以上は続く人生を助けて欲しいと思ってるんだ。
『…やってみる』

僕は小さく呟いた。
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