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ヒロイン三国ファンタジー
第14章 14 英雄たちの死・1
 寝台の上で孫尚香は花婿を待つ。赤い婚礼衣装を着、仏頂面が赤い布で覆われている。
孫権の言うように、彼女は婚礼を拒むことはなかった。関羽が死んでしまい、玄徳を心から得ることはもう叶わないという思いもあり半ば捨て鉢である。

 陸遜という若者がよくもこのような年増の寡婦を娶りたいと思うのもだと呆れてもいた。尚香は陸遜の事は呉郡四姓の名門の出であるということと、呂蒙がその才を認めて、後を任せたという事だけだった。
 顔は一度だけ見た気がする程度だ。男の割に白い顔と細い身体を持っていたような気がする。

 ぼんやりしていると、陸遜が到着したらしく、屋敷を守らせている女兵士がやけに騒めいている。

「一体何をそんなに騒いでおるのだか」

 すぐに理由は分かった。陸遜は花嫁の衣装でやってきたのである。

「な、その恰好は……」

 男が女物の着物を着ることは屈辱でしかないであろうに、彼はご丁寧に顔も赤い布で覆い静かに尚香の隣に座る。
そっと陸遜の手は尚香の顔の布を取り唖然としている瞳を見て微笑み、自分の布もあげた。

「あ……」

 布をあげた陸遜の顔を見て、更に尚香は驚く。

「あなたが女人がお好きだと聞きまして」

 髭をそり、化粧をし、すっかり女人のようだ。そして声まで高く澄み切っている。

「そ、そなたは、そのような恰好をして……」
「声は薬で変えております故、もうしばらくしましたら元に戻ってしまいますがお許しください」

 陸遜の怪しい倒錯めいた装いと、なにやら漂う香に尚香は少しめまいを覚えた。
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