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ヒロイン三国ファンタジー
第19章 19 山陽公
「そなただけであるな。こうして弔問に来るものは」
「山陽公となられましても、やはり私にとっては陛下であらせられますので」
「ふふっ。どうであるか? 魏の方は。兄上は皇帝としてどうだ?」
「文帝は誠実なお方ですので内政も整っておいでです。しかし……」
「心配事は蜀か? それとも曹家のことか?」
やはり曹節は一番亡き曹操に容姿も中身も似ており、鋭さに司馬懿は舌を巻く。
そしてその聡明さに我が血も入っているのだと思うと誇らしくてならないが、恨めしいのは後を継がぬということである。
「蜀を押さえることはすなわち漢王室の消滅……。そして亡き魏王のお志がだんだんと薄らぐことが心配なのです」
「魏王の事を思い出すがよい。魏王ならどう考えるか。恐らく起こってしまったことはもうしょうがないと言うであろう。『我、人に背けども、人、我に背かせじ』この言葉を誤解してはならぬ。正しいと思うことをするがよい」
「ははあ!」
「王室の存続は良いものであれば維持も出来ようが、それが民のためならざるのなら消滅も仕方あるまい。もし文帝の太子、曹家のものが亡き魏王の意志に反するものであれば――そなたの正しいと思うことを為すがよい」
「……」
今後の皇帝が暗愚であれば、曹節は暗に魏王朝を倒しても構わぬと言っている。
「あなた様が魏王の跡継ぎであれば……」
「ふふっ。それはそれで面白いかもしれぬが、魏王、いや、母上は自分と同じ生き方を望まないであろうし、わたくしもまたこうして陛下と添い遂げられたことが満足である」
「そうですか……」
「忠臣である司馬懿よ。きっと陛下の――漢王朝のご加護があるでしょう」
「どうぞ、お元気で」
「ええ。お互い命を大事にしましょう」
親子の名乗りを上げずとも曹節には彼が父親だとわかっていた。劉協への忠誠もあるが、娘の様子も見たかったのであろう。
司馬懿を見送ったのち、曹節は曹操の扮装を解き、女人の姿へと戻る。
「山陽公となられましても、やはり私にとっては陛下であらせられますので」
「ふふっ。どうであるか? 魏の方は。兄上は皇帝としてどうだ?」
「文帝は誠実なお方ですので内政も整っておいでです。しかし……」
「心配事は蜀か? それとも曹家のことか?」
やはり曹節は一番亡き曹操に容姿も中身も似ており、鋭さに司馬懿は舌を巻く。
そしてその聡明さに我が血も入っているのだと思うと誇らしくてならないが、恨めしいのは後を継がぬということである。
「蜀を押さえることはすなわち漢王室の消滅……。そして亡き魏王のお志がだんだんと薄らぐことが心配なのです」
「魏王の事を思い出すがよい。魏王ならどう考えるか。恐らく起こってしまったことはもうしょうがないと言うであろう。『我、人に背けども、人、我に背かせじ』この言葉を誤解してはならぬ。正しいと思うことをするがよい」
「ははあ!」
「王室の存続は良いものであれば維持も出来ようが、それが民のためならざるのなら消滅も仕方あるまい。もし文帝の太子、曹家のものが亡き魏王の意志に反するものであれば――そなたの正しいと思うことを為すがよい」
「……」
今後の皇帝が暗愚であれば、曹節は暗に魏王朝を倒しても構わぬと言っている。
「あなた様が魏王の跡継ぎであれば……」
「ふふっ。それはそれで面白いかもしれぬが、魏王、いや、母上は自分と同じ生き方を望まないであろうし、わたくしもまたこうして陛下と添い遂げられたことが満足である」
「そうですか……」
「忠臣である司馬懿よ。きっと陛下の――漢王朝のご加護があるでしょう」
「どうぞ、お元気で」
「ええ。お互い命を大事にしましょう」
親子の名乗りを上げずとも曹節には彼が父親だとわかっていた。劉協への忠誠もあるが、娘の様子も見たかったのであろう。
司馬懿を見送ったのち、曹節は曹操の扮装を解き、女人の姿へと戻る。