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ヒロイン三国ファンタジー
第19章 19 山陽公
――かつて劉協は曹操を愛しており、他の皇后たちを彼女以上に愛することはなかった。たとえ、身体を重ねることがあっても世継ぎを作るための義務であり愛を交わす行為ではなかった。
そのせいか二人の皇后は曹操を憎み、討たんと父親と共に謀り、そして親子ともども廃される。


 曹節は曹操によって劉協の皇后となり、彼に仕えた。二人の皇后の話を聞いていたので、自分は何ら期待せず陛下に仕えようと思っていたが、やはり何も思わないことは難しかった。
 劉協は聡明で優しく何よりも優美で品位が高かった。曹操を信奉しているので会話のほとんどが彼女の活躍の話であったが、曹節にしてみれば自分の母親の話である故、素直に聞き入っていた。そのかいあってか劉協も亡き皇后たちよりも曹節を愛しむ様になり仲良くなっていく。

 母を超えて愛されているとは思えなかったが、大事に優しく抱かれるうちにいつか曹操を超えたいと曹節は願っていた。


 やがて曹操が死に、劉協は禅譲し山陽公に封じられ曹節と共に二人でひっそりと暮らす。
曹節は彼のために曹操に扮して抱かれてきた。

「ああ、孟徳。朕の孟徳……」

 母親の名を呼ばれながら抱かれ続けても、曹節は挫けずじっと耐え忍ぶ。

 やがて太子が産まれ劉協は目を覚ましたように「ああ、節。そなたはどれだけ朕を愛してくれていたのであろうか」と曹節の顔をまっすぐに見た。

「陛下……」

 やっと劉協は長年の夢から目覚めたように曹節を慈しみ愛し始める。
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