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ヒロイン三国ファンタジー
第23章 23 三国を巡って
「お久しゅうございます」
冥福を十分祈った後、さきほどの老婆に声を掛けられる。
「ん? 何か?」
「お髭がとれそうでございますよ」
「あ、か、かたじけない。こ、これには訳が、あの、決して他国の間諜ではない」
「ええ、ええ、そうでしょう。あなた様は玄徳さまを熱心に参られてましたもの」
老婆は優し気に言い、尚香の男装の理由にも、彼女自身についても言及しなかった。
「あなたはなんでもよく知っておられますね」
「ふふふっ。長生きしているだけですじゃ」
「そうですか。では私はこれで。これから定軍山の孔明殿を参ります。どうぞお達者で」
「ええ、ええ。あのお二人をもう一緒に見ることが叶わないと思うと生きる楽しみがありませんがね。あなたもどうぞお気をつけて」
一礼し、尚香は老婆の前を去った。彼女ともっと話せばいづれ自分の身の上を知られそうだ。
老婆は尚香の背中を見ながら、薄々と彼女がかつて劉備の妻であった孫尚香であると気づいていた。
ただ彼女が陸遜の妻であることは知り得なかったので、劉備を参るためお忍びで蜀に来たのだと思い劉備を倒したにくい敵とは思わなかった。
夕暮れと共に、成都の町に静けさが訪れる。老婆はまた明日も玄徳さまを参ろうと、早々に眠りについた。
冥福を十分祈った後、さきほどの老婆に声を掛けられる。
「ん? 何か?」
「お髭がとれそうでございますよ」
「あ、か、かたじけない。こ、これには訳が、あの、決して他国の間諜ではない」
「ええ、ええ、そうでしょう。あなた様は玄徳さまを熱心に参られてましたもの」
老婆は優し気に言い、尚香の男装の理由にも、彼女自身についても言及しなかった。
「あなたはなんでもよく知っておられますね」
「ふふふっ。長生きしているだけですじゃ」
「そうですか。では私はこれで。これから定軍山の孔明殿を参ります。どうぞお達者で」
「ええ、ええ。あのお二人をもう一緒に見ることが叶わないと思うと生きる楽しみがありませんがね。あなたもどうぞお気をつけて」
一礼し、尚香は老婆の前を去った。彼女ともっと話せばいづれ自分の身の上を知られそうだ。
老婆は尚香の背中を見ながら、薄々と彼女がかつて劉備の妻であった孫尚香であると気づいていた。
ただ彼女が陸遜の妻であることは知り得なかったので、劉備を参るためお忍びで蜀に来たのだと思い劉備を倒したにくい敵とは思わなかった。
夕暮れと共に、成都の町に静けさが訪れる。老婆はまた明日も玄徳さまを参ろうと、早々に眠りについた。