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ヒロイン三国ファンタジー
第23章 23 三国を巡って
ギョウを出立し、黎陽に立ち寄り、ここで曹操が袁紹を打ち破ったのだと感慨深く広い平野を眺めた。しばらく進むと黄河に突き当たる。
「ああ、大きな河を見ると心が安らぐ。しかしこの色は少し受け付けぬがな」
長江の青い水面を思い出す。河を渡るのに馬を売り小舟に乗る。気の良さそうな年老いた船頭が「ここら辺のお人じゃないねえ」と声を掛ける。
「ああ、今は北からだが、南の生まれだ」
「なるほどぉ。今は治安もいいですしねえ。さすがは孟徳殿。皇帝になられて豊かになりましたよ」
「ん? 孟徳殿が皇帝?」
「ええ、ええ。最近視察においでにはなりませんけどねえ」
「そうか」
庶民の間では今もまだ曹操が生きていて、更には皇帝になったと知られている。誤りであると思ったが尚香は正さず、話を聞いた。
漢王朝最後の皇帝、献帝を廃することも、王朝が変わることも、誰が現在の皇帝であるかということも、日々を生きる民草には大きな問題ではないのだ。
路銀を渡すと、老人は親切に馬を求めるところまで案内してくれた。
官渡の戦いで袁紹軍を壊滅し、黎陽の戦いで破り、袁紹はその後病死した。その戦いから50年近く過ぎている。
その頃、麗しい長兄の孫策を亡くし嘆き悲しむばかりであった20歳前の孫権を母の呉氏と共に気を強く持たせ、後を継がせんと叱咤激励したことを覚えている。10歳を過ぎたばかりであったが、尚香は長兄を亡くした悲しみよりも、不甲斐ない次兄に怒りが沸いた。
それから、孫権に対して妹の身でありながら厳しい姉のように接してしまうのだった。ただ孫権はそのことを厭わず、尚香の進言を受け入れていたので兄妹仲は良かった。
「私が自由奔放に過ごしてこれたのは、兄たちのおかげであるよのう」
兄に感謝をしながらも、この天下分け目の官渡の戦いに参加できなかったことは残念な気がしていた。
いつも呉は出遅れている。その分、魏や蜀のように国力をそぐことはなく民は豊かであるが。
「ああ、大きな河を見ると心が安らぐ。しかしこの色は少し受け付けぬがな」
長江の青い水面を思い出す。河を渡るのに馬を売り小舟に乗る。気の良さそうな年老いた船頭が「ここら辺のお人じゃないねえ」と声を掛ける。
「ああ、今は北からだが、南の生まれだ」
「なるほどぉ。今は治安もいいですしねえ。さすがは孟徳殿。皇帝になられて豊かになりましたよ」
「ん? 孟徳殿が皇帝?」
「ええ、ええ。最近視察においでにはなりませんけどねえ」
「そうか」
庶民の間では今もまだ曹操が生きていて、更には皇帝になったと知られている。誤りであると思ったが尚香は正さず、話を聞いた。
漢王朝最後の皇帝、献帝を廃することも、王朝が変わることも、誰が現在の皇帝であるかということも、日々を生きる民草には大きな問題ではないのだ。
路銀を渡すと、老人は親切に馬を求めるところまで案内してくれた。
官渡の戦いで袁紹軍を壊滅し、黎陽の戦いで破り、袁紹はその後病死した。その戦いから50年近く過ぎている。
その頃、麗しい長兄の孫策を亡くし嘆き悲しむばかりであった20歳前の孫権を母の呉氏と共に気を強く持たせ、後を継がせんと叱咤激励したことを覚えている。10歳を過ぎたばかりであったが、尚香は長兄を亡くした悲しみよりも、不甲斐ない次兄に怒りが沸いた。
それから、孫権に対して妹の身でありながら厳しい姉のように接してしまうのだった。ただ孫権はそのことを厭わず、尚香の進言を受け入れていたので兄妹仲は良かった。
「私が自由奔放に過ごしてこれたのは、兄たちのおかげであるよのう」
兄に感謝をしながらも、この天下分け目の官渡の戦いに参加できなかったことは残念な気がしていた。
いつも呉は出遅れている。その分、魏や蜀のように国力をそぐことはなく民は豊かであるが。